研究実績の概要 |
省察力は「学び続ける教師」であるために不可欠である。しかし,省察力育成に培う基礎的研究として,省察の促進・阻害要因の解明が十分ではない。そこで,省察の促進・阻害要因の解明に取り組んだ。 研究は,教職大学院の院生の記述の分析を中心に行い,2022年度3月のオランダの教師教育の現場の視察を含め,次に挙げる6点の研究成果を得た。①促進要因5点と阻害要因8点の導出。②省察を行う院生個々に対する環境整備の具体の把握。③リフレクションが「獲得的レジリエンス要因」(平野2018:62)の強化に有益なことの把握。④養成機関でのリフレクションの学習の充実が違和感への感度を高め自身によるリフレクションの開始につながることの発見。⑤教師教育者が視野(学問領域,実践知,自己の特性)に自覚的になることの必要性の指摘。⑥自己の学びの整理と選択を集積すること,大学での授業と実習により,多様な人々と接することを通し,教え方を見て自分で試み, 考えて身につけて自分にマッチする方法を見出すように促し,自分のスタイル,自分の考え,教育観を見つけ出すように仕向けることの必要性。特に④において,院生のレポート分析から,省察発生の場面,省察を忌避する感情を見いだすことができたことは大きい。 これらから,日本における教師の省察を促進するための手立ての充実を具体的に考えることができた。また,上記の成果は,日本教師教育学会(2018/11/17)(2019/03/10),論文「リフレクションへの志向性の形成を促す学習内容に対する提案」等(2018,2019,2020,2021)で発表した。 以上の研究成果は,2020年から開始した基盤研究(C)「自己探究に基づくリフレクションへの志向性の形成を促すカリキュラムの開発」 (研究代表:若木常佳)にも役立つものとなっている。
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