研究課題
学力結果が良好な学校が「成果報酬としての自律性」を享受する一方、マイノリティが集住する「不利」な学校では、標準化に向けた過度な介入が行われ、結果として学びの質をめぐる格差が拡大するという矛盾が指摘されている。本研究は、「貧困と学力」をめぐって厳しい課題を抱える小学校をフィールドとし、10年間にわたる共同研究に基づき、格差を克服する学びのためのキーワードとして「学びとケアをつなぐ教育実践」を提起した。このキーワードは、ヴィゴツキー学統やネル・ノディングズらに理論的に依拠しながら、地域や子どもとの具体的な対話のものとに実践を積み重ね、導き出したものである。(その成果は、『海と空の小学校から学びとケアをつなぐ教育実践 自尊感情を育むカリキュラム・マネジメント』(明石書店、2018)として公刊している。)今年度は「学びとケアをつなぐ教育実践」の力量を培う「専門職として学び合うコミュニティ」が形成される道筋について、教師のライフヒストリー研究やナラティブ的探究によって導き出した。そこでは、標準化への圧力で苦悩する若手教師の葛藤が浮かび上がり、養護教諭が子ども理解の共有を通して保護者と担任(若手教師)やベテラン教師・管理職をつなぐ重要な役割を果たしており、また先輩教師が若手教師に寄り添い「子どもに関わる小さなエピソード」を日常的に交流することが、若手教師が「安心」して専門性を培う土台となっていることを明らかにした。この知見は、情動の次元を重視し、「専門職の学び合うコミュニティはケアリングの文化と組み合わせることで最も効果的に機能する」としたアンデ・ィハーグリーブス(原著1998/邦訳版2015)の指摘と合致する。この調査結果については、『沖縄における「格差と学び」をめぐる臨床教育学研究ー教師教育の質的向上をめざして』(科学研究費補助金基盤研究(C)報告書、全142頁)としてまとめた。
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琉球大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻紀要
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国語教育史研究
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