研究課題/領域番号 |
17K04564
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 美香 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90331610)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 中国 / 台湾 / 香港 / 愛国心教育 / 教科書 / 公文書 / 政治 |
研究実績の概要 |
平成30年度から小学校において「特別の教科道徳」が行われている。アジアにおける日本の道徳教育のあり方を議論するために、中国・台湾・香港における道徳教育の目的、道徳教育・愛国心教育について歴史的背景を論じた。今年度は、主に、各国・地域の戦後の公文書を調べ、どのような道徳教育・愛国心教育の実態があったのかを調べた。 (1)中国については、広東省立図書館で、現地のみで得られる資料を収集した。 (2)台湾については、国家教育研究院教科書図書館で収集した教科書、台湾大学図書館の資料をふまえて、戦後国民小学・高校の政治と愛国心教育について論じた。戦後国民小学の「課程標準」(学習指導要領)の変遷について論じ、同時に、1996年から行われた「道徳と健康」について明らかにした。 ほかに、戦後台湾高校の道徳教育に関する制度・教科書に関して、時代背景、現在の状況を研究した。台湾の高校における道徳教育は、思想教育が中心であったため、実践を伴わず、政治の教育に対する影響が大きかったことが特徴である。一方で、現在も、高校には軍人がおり、「軍訓」の授業が行われている。戦後台湾では「軍訓」の授業が継続され、このような訓練は道徳教育にも影響を及ぼしているといえる。 香港については、1960-70年代の公文書を用いて、政府が左翼系学校に対して学校閉鎖や関係者を監禁するなど大変厳しい態度をとった具体的な状況を明らかにした。1960-70年代の香港の政治と愛国心教育から、政治がどのように現場の教育に入り込むのかを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
香港については、香港政府档案処・香港大学図書館に行き、香港政府档案処では戦後30年ほどの道徳教育、愛国心教育に関する公文書を徹底して調べ、関連する公文書の所在が分かり、写真撮影ができた。現在は、80年代以降の道徳教育・愛国心教育に関する論文を発表するための準備をしている。 台湾については、戦後台湾の道徳教育が行われる背景、教育課程、愛国心教育について資料収集を行った。国家教育研究院教科書図書館で国民小学・国民中学・高校の道徳教科書の収集、国家教育研究院で公文書、台湾大学図書館・国家図書館で関連先行研究を収集した。 調査によって、アジアにおける道徳教育と愛国心教育について、新しい資料を見つけると同時に、最近の研究動向を理解することができた。 今年度は、本研究で必要な資料収集、関係者とのネットワークづくりを行うことができた。今後は資料収集以外にインタビュー調査を行うため、台湾に行く準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、基本的な研究推進方策の変更はない。 台湾・香港の戦後道徳教育・愛国心教育に関する先行研究において、既に事実として認められていることについても、詳細な議論がさらに必要である。そのため、今後、台湾・香港の地域・人物を対象とした個別の研究をすることで、その道徳教育・愛国心教育の全体像を組み立てなおす作業をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は前倒し支払請求を行ったが、計画した学会発表を取りやめたことなどで、前倒し請求額分の一部が使用できなかった。次年度は、海外で学会発表を複数回する予定であるため、主に旅費等に使用したい。
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