研究課題/領域番号 |
17K04564
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 美香 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90331610)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 道徳 / 台湾 / 愛国心 / 香港 / 中国 |
研究実績の概要 |
今年度は、台湾の元教師・生徒に対して道徳教育と愛国心についてインタビューを行った。具体的には元教師がどのような道徳教育を行ったのか、また元生徒にはどのような道徳教育が印象的であったのかを聞いた。これらの成果は、山田美香「戦後台湾の道徳教育 と愛国心―教師・関係者 へのインタビュー―」(教育史学会第62回大会、2018年9月)、張汝秀・山田美香「生徒から見た戦後台湾の道徳教育」(台湾史研究会春季例会、2019年3月)で報告した。元教師はどのような道徳教育が生徒の発達にとって良いのか、また社会から見て自らが行う道徳教育の意味が何であったのかを語ってくれた。元生徒はその生き方も様々であり、道徳教育の捉え方もその価値観や生き方によって大きく異なることが明らかとなった。 また、昨年度・今年度と2年間で多くの道徳教育に関わる資料を収集し、日本・中国・台湾の戦後道徳教育について、’THE MORAL EDUCATION IN POST-WAR ASIA (JAPAN, CHINA, AND TAIWAN)’, The 44th annual AME (association for moral education)conference in Barcelona (Mika Yamada、2018年11月)でポスター発表をした。 今年度は台湾におけるインタビューを中心に調査を行ったが一部地域における調査であったため、台湾の他地域の教師や生徒に今後インタビューを行いたいと考える。さらに中国や香港についても必要な調査を次年次以降行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで科研費で2年間研究をしてきたが、1年目は台湾の道徳教育のカリキュラム・教科書研究、香港の公文書を用いた愛国心教育を行った。台湾の教科書図書館(国家教育研究院)で小中高の道徳教育に関する教科書の写真撮影等を行い、これをもとに研究報告をした。つまり、台湾のカリキュラム・教科書研究は十分に行ったと言える。この研究に関わる一般書・論文等の収集も行っていることから、道徳教育や愛国心教育に関わる公文書の収集が必要だと考えている。 2年目は台湾でインタビューを行った成果を学会・研究会で発表した。インタビューは、この研究の目的である「人が成長することと道徳教育の在り方」に関わる中心的なテーマについて対象者と議論をした。しかし特定の地域の元教師・生徒へのインタビューであったことから、台湾の多様な地域でインタビューを行う必要がある。 一方、これまで2年間は台湾研究が中心であり、他の研究対象である中国・香港のインタビュー等はまだ行っていない。そのため、次年度以降は中国・香港の元教師・生徒へのインタビューが必要である。 全体的な進捗状況は、ほぼ順調であると考える。1・2年目の台湾の道徳教育研究については学会発表等も行い、成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後3年間に中国・香港のインタビューを行い、台湾においてさらにインタビューも行いたいと考える。 中国側の道徳教育・愛国心教育の資料はある程度持っていることから、今後可能な範囲でさらに資料収集を進めたい。また香港のカリキュラム・教科書研究などは十分に行っていないことから、香港大学図書館を中心に資料収集を行い、ほかに公文書の収集も行いたいと考えている。中国・香港の教育関係者に対するインタビューも行いたい。 現在は、「道徳教育と愛国心」の資料を集めてそれを整理すればその国・地域の状況が明らかになるというものではない。どの国・地域においても価値観が多様となり道徳教育が重視されない状況がある。このような状況を踏まえてどのような視点で研究を進めていくのかを考えることも重要である。つまり「道徳教育と愛国心」を考えるためには、社会の動きや政治的な闘争、さらに教育課題など多くの状況を理解しないと研究が進められないのである。 これらのことから、今後は中国・台湾・香港の政治・社会・教育に関わり広い視点の研究を行いつつ、「道徳教育と愛国心」に関わる焦点を絞った研究を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は海外から研究者を呼ぶ予定であったが、予定通りに行うことができなかった。今年度使用できなかった予算については、私が次年度海外調査をするための費用としたい。
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