研究課題/領域番号 |
17K04570
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
片瀬 一男 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30161061)
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研究分担者 |
天童 睦子 宮城学院女子大学, 一般教育部, 教授 (50367744)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミッション / 女子教育 / 文化資本 |
研究実績の概要 |
今年度は宮城学院女子大学の同窓生へのインタビューを継続する一方で、同窓会誌『期にいたりて実を結び』の内容分析を行った。またその成果は、11月に宮城学院女子大学で、京都大学大学院教育学研究科の稲垣恭子教授を招いて行われた講演会において報告した。同窓会誌の内容分析には,テキストマイニングの手法を用いた。この方法は、テキスト型のデータをコンピュータに取り込み、そこから抽出した語彙の間の関係を調べ、多変量解析の手法を用いて、テキストの構造を探索的に分析する手法を意味する。テキスト・マイニングに利用することのできるソフトウェアにもいくつかのものがあるが、今回はKHcorderを用いた。このソフトウェアは①多変量解析によって分析者のもつ理論や問題意識の影響を極力受けない形で、データを要約・提示する、②コーディング・ルールを作成し、毎時的に理論仮説の検証を行うことができる。 この分析では、卒業生をコーホート1(1909-51年卒 旧制高等女学校・女子専門学校時代の卒業生)、コーホート2(1952-79年卒 新制女子高等教育の始まり)、コーホート3(1980年以降卒女子高等教育の展開)にわけて、同窓生の寄稿文を分析した。対応分析の結果、戦前期は西欧的・キリスト教的文化資本が支配的な学校文化となっていたのに対して、戦後前期は結婚・出産後は家庭に入るという女性の標準的なライフコースを反映して、日本的・家族的な文化が同窓生の集合的記憶として語られていた。最後に最も新しいコーホート3では、英語などを活かして国際的な仕事や教育・研究活動をするといった専門職的なスキルが大学教育に求められるようになったことが示唆された。 以上のことから、記念誌に投稿された同窓生の寄稿文を3つのコーホートごとに分析することで、戦前期から現代にいたる宮城学院の教育あるいは文化資本の伝達の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだインタビューは完成していないが、同総会誌3冊の内容分析よってそれなりの知見を得ることができた。これにより宮城女学校から宮城学院女子大学に至る学校の歴史の概略は把握することはできた。 なおこの年度は、ランカスター神学校からアメリカのドイツ改革派教会の資料も得ることができた。この内容分析は次年度以降の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今までおこなってきたインタビューのインフォーマントにせよ、同窓会報への寄稿者にせよ、同窓会からの推薦ないしは依頼によるものであり、その意味で同校卒業生でも「成功者」であったり、エリートであったりで、一般の卒業生からの偏りは大きいものと思われる。 そこで、今後は一般の同窓生に郵送調査により質問紙調査を行い、学校時代の女子ミッション教育が日常生活や地域社会とのかかわりにおいて、どのような役割をもっているのかを明らかにしたい。 先行研究としては、利谷信彦らのお茶の水女子大学卒業生の調査(『高学歴時代の女性:女子大学からのメッセージ』有斐閣、1996年)および青井和夫らによる津田塾大学卒業生への調査(『高学歴女性のライフコース:津田塾大学出身者の世代間比較』勁草書房)などがある。いずれも戦後の女性の高学歴化(大学進学率の上昇、短期大学から4年制大学への進学先シフト)を背景に、女子高等教育(たとえば家政学部)がどのような変容を遂げたか、またそれが卒業生のライフコース(職業と家庭の両立、労働市場における位置づけなど)の展開にどのような影響を受けたかを、卒業生の世代間比較によって明らかにしている。 本研究の対象校である宮城学院は、1947年の学校教育法公布を受けて、宮城学院女子大学の設置認可を受けた。その後、1954年には教員養成課程、55年には保育科教員養成課程、67年には司書課程も認可されるなど、職業教育にも力を入れ始める。さらに1995年には学芸学部に人間文化学科、2000年に食品栄養学科など4学科を設置、16年には4学部9学科からなる総合的な大学となった。その背景には、18歳人口減と女子教育へのニーズの多様化に対応するという女子大学の存続をめぐる大学の経営戦略もあったと考えられる。こうした学科構成の変容が、卒業生のライフコースの展開にどのような影響を与えたか究明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、比較的、規模の大きな郵送調査を卒業生を対象に行う必要ができたため。
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