研究課題/領域番号 |
17K04573
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
佐藤 由美 専修大学, 商学部, 教授 (10399123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育史 / 師範学校 / 台湾 / 朝鮮 / 日本統治時代 / 中等教育機関 |
研究実績の概要 |
研究の目的のうち、①統治初期から末期までの台湾総督府、朝鮮総督府、文部省による師範教育政策の変遷、②台湾・朝鮮における各師範学校創設経緯と制度の改編状況、及び学生数の推移、③各科における就学状況の実態と教育内容・方法の分析、学校別事例研究を継続中である。①②については概ね作業を終えているが発表には至らなかった。また、③に関連して韓国(春川・光州等)で資料調査を行い成果を得ることができた。さらに、本研究から派生した研究にも進展があった。具体的には以下の通りである。 1)年表作成のために収集した『受験界』の記事には、師範学校の入学に関する情報以外にも、教員検定試験を含む資格検定試験を受検した朝鮮人読者の合格体験記が数多く含まれていた。そのため研究資料として「雑誌『受験界』掲載の朝鮮人投稿者による記事一覧」を作成し『植民地教育史研究年報』25号に掲載した。 2)2022年3月『専修大学人文科学年報』第52号に掲載の「大正・昭和戦前期の中等教育機関と朝鮮人「留学生」」で取り上げた興文中学校(広島県呉市)について国内外から情報が寄せられた。師範学校研究から派生する中等教育機関の研究として広島県立図書館や呉市立中央図書館での資料調査を行い、関係者と研究交流の機会をもった。 3)2023年3月、韓国で資料調査を行うことができた。韓国人研究者の協力を得て、2017年、2019年に予備調査を行っていた光州教育大学校教育博物館、春川教育大学校教育博物館を訪ね、資料の閲覧、収集を行うことができた。また、国家記録院ナラ記録館で公開されているデジタル文書も利用し、朝鮮の師範学校については学校別事例研究の準備を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・本研究では、新型コロナウィルス感染症拡大以前に韓国(光州・春川)、台湾(台南)に予備調査に出かけていたが、長らく本調査を実施できずにいた。研究方法の変更も思案していたことが、全体として研究が遅延した理由である。ただ、2022年度は3月末に韓国での調査を行うことができ、状況は好転している。延長した研究期間で台湾の調査も計画する予定であり挽回したいと考えている。 ・上記理由により、日本統治下の台湾・朝鮮の師範学校の研究そのものは遅れているが、そこから派生した研究は進めている。特に、朝鮮人が数多く学んでいた広島県呉市の興文中学校(戦前の中等教育機関)については、資料や情報の収集が進んでおり論文発表を準備中である。また、「朝鮮教育令」や「朝鮮奨学会」に関する公文書の解題と目録を編纂しており、そのなかにも師範学校に関する史料が含まれているため、随時、閲覧・分析中である。 ・年度当初には、朝鮮及び台湾の師範学校の関連年表、関連統計を発表することも考えていたが、達成できなかったため「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
海外調査の結果を踏まえた研究のまとめを行い以下の方法で発表する。また、師範学校研究から派生した「戦前日本の中等教育機関に学んだ朝鮮人学生」に関する研究についても広島県呉市の興文中学校を事例として学会発表または論文発表を行う。 1)海外調査(台湾、韓国2回目)を実施する。(旧師範学校文書の閲覧・収集) 2)朝鮮及び台湾の師範学校の関連年表を完成し資料として発表する。 3)朝鮮及び台湾の師範学校の関連統計を完成し資料として発表する。 4)台湾または朝鮮の師範学校に関する学会発表または論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた主な理由は、当初予定していた台湾への調査旅行が感染症拡大のために実施できなかったことによる。(但し、状況は好転しており、韓国への調査旅行は実施できた。)また、学会もオンライン開催となったため旅費は発生しなかった。 ・使用計画としては次の3点を考えている。 ①台湾への調査旅行、及び韓国への2回目の調査旅行の海外旅費、②国内の資料調査、及び対面での学会参加のための国内旅費、③研究成果として年表や統計を資料として公表するための費用
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