本研究課題では、新制大学における家政学系大学・学部等の創設期に、家政学系学部の設置あるいはその教育活動を遂行した大学の当時の資料の収集整理を通じ て、当時の学としての「家政学」の学界また各教育機関の「理解」に着目してきた。結果、家政学2類型(1 ランド・グラント大学の主たる使命である地域貢献 (生活改良を含む普及事業)を家政学の使命として明確に位置づけ、それを実践した大学と、2普及概念を前面に押し出さず、学問としての家政学の確立と女子の 高等教育機会拡大の場としての家政学部の設置に力点を置いていった大学)に分化していくことが明らかになった。またその過程で、戦前、戦間、戦後改革期の 家政学構想のつながりが新制大学創設にどのように反映されたか、家政学の変容に影響を与えた人物や団体を整理し、「日本における家政学の再編過程」を図式 化した(『戦後大学改革と家政学』(2020)東京大学出版会)。 事例研究の中で、地域貢献(生活改良を含む普及事業)を大学の使命として明確に位置づけ、それを実践した大学」の中で、東北大学と高知女子大学(現 高知県立大学)は「生活科学」という概念をもちながら学としての存在意義とその教育内容を模索したことを明らかにしてきた。さらに過程の詳細やそもそも生活科学 という概念が戦前期の何から引き継がれ、また戦後改革期においてアメリカの影響により変容したのかについて検討が必要であることが導き出されていた。現地調査(沿革史誌の一次資料を含む大学文書館等)を行う予定であったが、コロナ禍において見送らざるをえなかったため、手元文献やこれまでのデータ整理をすることで、残された課題を明らかにし、当時のキーパソンに焦点をあてる必要があることがわかった。
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