研究課題/領域番号 |
17K04583
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
井手 華奈子 創価大学, 教育学部, 准教授 (30532444)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 沖縄 / 慈善活動 / 女性の平和教育 / 米軍基地 / 大人の平和教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世代間の教育的ニーズの差異に着目し、大人のための平和教育と子どものための平和教育の分類とその関係性について考察することで、共生の概念を発展させることである。研究目的に到達するための該当年度の具体的な研究活動は、第一に、在沖縄米国人と沖縄の地元住民が戦後直後から継続して協力関係のもと展開してきた慈善事業に関する情報、文献、視覚資料、個人所有の史料の収集をおこなうことであった。該当年度における情報収集のための具体的な作業は、沖縄の離島で長期交流の経験のある福祉施設、諸慈善活動事業の現在のリーダー達や過去のリーダー達との面会、米軍基地内の慈善活動の拠点の訪問、沖縄公文書館や米国のアーカイブスでの資料検索を通して資料収集をおこなうことであった。第二に、国際学会において、本研究の概要についてwork in progressという形式で発表し、研究の骨格部分の批判とアドバイスを広く得ることであった。該当年度における研究発表の機会は2回あった。ひとつは、デンマーク・オーフス大学で開催された国際会議において、平和教育における世代を意識することの重要性について研究発表し平和研究先進国の北欧諸国やヨーロッパ諸国の研究者から有意義な批判を得ることができた。もうひとつは、オーストラリア・ニューカッスルで開催された国際会議において、大人のための平和教育の目的と子どものための平和教育の目的の違いについて研究発表した。先住民の哲学への関心の強いオーストラリアやニュージーランドの研究者やオセアニアのフェミニスト教育哲学者より今後の研究発展のための有意義な批判を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
およそ順調に資料集をすすめることのできた一年であったが、反省点もある。 順調だった点については、主に資料収集をあげることができる。これまでの若手研究の研究成果をふまえて、各所においてすみやかな資料収集をおこなえたと全体的には考える。他方、資料収集における反省点としては、歴史的資料は比較的存在するが、現在の活動に関する資料の収集は容易ではなく、来年度以降の課題として残った。特に、歴史的にこれまで価値を認められてこなかった史料を捜索する必要性が明らかになった。また、北欧とオセアニア地方では研究発表の機会を得たが、北米やヨーロッパ諸国での研究発表は来年度以降の課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の3点にまとめられる。 第一に、継続した資料収集があげられる。歴史的に長く継続され、社会において認知されている慈善活動の史料の収集が、主体者が主に女性・主婦・配偶者を中心とした活動であること、社会的な注目を目的にしていないことから、公官庁には資料はほぼ保存されておらなず、日米双方の個人所蔵の資料に頼るところが大きいため、定期的に関係者への連絡と訪問によっての情報収集が今後も必要である。 第二に、収集した資料の理論化があげられる。本年度は本研究の概要について、国際会議での発表の機会を得ることができたが、今後は収集した資料を理論化した中間発表の場で批判とアドバイスを受けることが必要である。理論化の過程は、慈善諸活動を通して特に、「大人が享受したもの」についての具体的な分類と分析検討を必要とする。 第三に、中間発表の準備とともに、研究の最終報告となる研究論文の執筆作業に取り掛かる必要がある。本年度の情報収集において、結論としての仮説への見通しを立てることはできた。その仮説を検証し、証明するために、現代のアメリカ民主主義教育の哲学的な論理上枠組みから、実態を検証したり、実情から理論的枠組みを哲学的に批判考察することで、situated philosophyの研究手法をアプライしながら、世代間相互の平和教育の概念を支える思想や精神について検証していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
執行率は99%である。残りの1%は、年度末に自費で急きょ資料印刷した代金と自費で購入した関連書籍である古本とほぼ同額である。差額としての残高は、4月と5月の資料収集の印刷代、4月に購入する予定になっている関連書籍の書籍代として使用する予定である。
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