研究課題/領域番号 |
17K04586
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
早川 操 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (50183562)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | L. コールバーグ / 道徳的発達 / 認知段階 / 発達の加速化 / 文脈的相対主義批判 / 原理に根ざした思考 / 理想的な役割取得 / 究極的な第7段階 |
研究実績の概要 |
二年目の研究計画としては、デューイの「反省的道徳」理論とL.コールバーグの「道徳性発達段階」理論との比較分析を中心に取り組んだ。2018年9月に名古屋大学で開催された日本デューイ学会第62回研究大会において、このテーマに関する個人研究発表を行なった。 学会発表では「コールバーグによるデューイの道徳理論の評価についての考察」というテーマで、コールバーグが自らの道徳理論の立場を「デューイ主義」と呼ぶ理由について検討した。発表では、コールバーグがデューイの「状況、思考、道徳的発達」の考えに基づいて自らの道徳理論を構築したことを指摘した。デューイと共通する道徳理論の基盤を持ちながら、コールバーグはさらに独自の道徳発達段階理論を展開するために「発達の加速化」という考えに基づいた高次の認知段階のための教育的介入についての提案を解明した。 続いて、コールバーグの高次の道徳性段階への上昇についての課題をデューイの反省的道徳の観点から考察し、「原理に根ざした道徳性」や「理想的な役割取得」などに見られるデューイ道徳理論との共通性を検討した。それとともに、コールバーグとデューイでは「文脈的相対主義」の評価について見解が異なることや、コールバーグが設定した道徳的発達の「究極的な第7段階」についてもデューイの反省的道徳とは相容れない見解が見られることなどを提案した。 学会での発表後は同学会誌に投稿し、査読審査の結果、同紀要第60号に掲載「可」となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究はデューイとコールバーグの道徳理論の特徴を比較考察することを中心に取り組んだ。コールバーグの道徳発達理論の基本的特徴を検討することで、デューイの道徳理論からどのような影響を受けたかを明らかにするとともに、デューイの主張や見解とは異なる理論を展開していることを指摘・解明することができた。 これらの研究成果を日本デューイ学会第62回研究大会で個人研究発表として報告することができ、同学会誌に投稿して掲載「可」となった。 以上の研究活動と成果から、今年度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の研究計画は、デューイの反省的道徳教育理論の継承の系譜をたどることで、応用的実践的な研究活動に取り組む。反省的道徳教育理論の継承・発展として第一に考えられるのは道徳的人間関係や共同体構築のための教育を提唱するD.ショーンの「反省的教授学習理論」とA.トムの「道徳的クラフト」理論を取り上げて、教師による道徳的関係構築のためのスキル習得についての実践的検討を行う。 また、わが国におけるデューイ道徳理論の受け入れと展開について考察するために、大正自由主義時代のデューイ教育思想の受容と変容を取り上げ、及川平治や木下竹次などの教育論や道徳教育論にどのような影響を与えたかについて検討する。 以上が3年目の「応用的研究課題」であり、「反省的道徳」教育理論パラダイムの影響の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、学会発表が当該研究者が住んでいる地元の大学で行われたことや、予定していた学会への参加ができなかったこともあり、旅費の使用額が少なくなってしまった。来年度は物品費の執行や旅費の執行について、早い段階から計画を立てて執行し、他の業務などと予定が重複しないように留意する。
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