本年度は最終年度にあたり、現代教育改革の焦点となっている「主体的な学習」や「協働的な学習」を念頭に置きながらデューイの「問題解決学習」理論の系譜をたどり、21世紀の「反省的道徳」教育理論の母体となる問題解決学習や探究学習の意義について考察した。 4年目の研究成果は、わが国におけるデューイの反省的道徳教育理論の受容と継承の系譜をたどることで、21世紀のデューイ教育理論パラダイムの可能性を「創造的民主主義」教育の観点から再検討したことである。 わが国における反省的道徳教育理論の継承や発展として、大正自由教育期におけるデューイの民主的教育理論を取り入れて自らの教育理論と実践を展開した及川平次の分団式動的教育理論の考察を行なった。同時期においてデューイ問題解決学習理論に基づいて、問題解決学習を通じての創造や独創を生み出すという創造教育論・独創教育論を展開した千葉命吉のデューイ教育理論の受容と変容の過程を分析することでその課題を提起した。また、戦後のわが国におけるデューイ民主的道徳教育理論の受容例として、「生活する場としての学校」や「生活による学習」について分析した梅根悟の問題解決学習理論の展開について考察し、戦後におけるわが国における教育や道徳の課題について検討した。さらに、「教育内容の現代化」期における、問題解決学習と系統的知識の学習のそれぞれの課題を解決するために、「デューイの後に来るもの」として発見学習理論を提案した広岡亮蔵による問題提起について分析した。 20世紀初期と後期におけるデューイ教育理論の系譜を分析することによって、21世紀のデューイ研究に求められる理論的実践的課題を「創造的民主主義」の観点から展望し、新たに展開されるべき反省的的道徳理論のフロンティアについて検討した。
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