研究課題/領域番号 |
17K04587
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
川村 覚昭 佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (90113050)
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研究分担者 |
笹田 博通 東北大学, 教育学研究科, 教授 (80154011)
小池 孝範 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (80550889)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 浄土真宗 / 臨済宗 / 曹洞宗 / 仏教の近代化 / 戦前期の仏教教育 / 布教教化の論理 |
研究実績の概要 |
平成31年度は、前年度に引き続いて資料収集と研究状況の発表と分析を中心に進めた。 まず、資料収集に関していえば、本研究を始めた当初から川村は浄土真宗関係、笹田は臨済宗関係、小池は曹洞宗関係を担当している。川村は、龍谷大学図書館所蔵の真宗本願寺派の機関新聞である「教海一蘭」を明治30年代の創刊号から昭和20年の廃刊までを閲覧し、特に昭和前期の資料を重点的に収集した。また宗教新聞である「中外日報」の昭和前期の資料、および宗教、特に仏教(その中でも浄土真宗)に教育学研究の中心を置いた京都帝国大学教育学講座初代教授の谷本富の資料を佛教大学図書館および国立国会図書館で収集した。笹田は、臨済宗の機関誌である『正法輪』の明治30年から平成3年までの資料、また『臨済時報』の昭和16年から18年までの資料を花園大学禅文化研究所と図書館で収集した。さらに「中外日報」の昭和46年の資料収集を行った。小池は、曹洞宗発行の『曹洞宗百年のあゆみ』および戦前期曹洞宗から発行された『禅宗読本』を資料として手に入れた。 平成31年度の研究会は5回行った。第1回は4月29日・30日、第2回は7月21日、第3回は9月24日、第4回は10月29日・30日、第5回は令和2年2月8日である。研究会では各宗派の民衆教化の近代化とその実態、布教の論理と組織、仏教教育の戦前と戦後の異同等について論究した。 平成31年度は本科研費の最終年度に当たるため、当初は年度末に研究報告書を作成することを視野に入れて研究を進めたが、31年度を含めた3年間の資料収集の結果、当初の予想を超えて膨大な量となったため、また宗派には未整理の資料が多数あることが分ったため、精緻な分析をするには31年度内では不十分であり、令和2年度へ期間延長を申請することになった。そのことは既に承認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本の近代化は、近代以前の人間生活を大きくリードしてきた仏教全体の体質を変えることになるが、我々はその変化を明治以降の仏教諸宗派の内部資料を丹念に読むことによって捉える作業を行ってきた。何分膨大な資料群のために読破することに時間がかかり、現在では第二次大戦前までの状況分析がほぼ出来上がっている。 この時期は、近代的な教団・教義・儀礼等を確立し、宗教(仏教)教育と教化に力を注ぐ過程であり、近代国家形成に対して仏教の立場から建白・提言・協力し、国民意識の形成と指導に大きく関っている。このことは、換言すれば、仏教が体制化されることであり、批判的視点が失われることでもある。各宗派も伝統的に維持されてきた学林や僧堂の教育制度を近代教育制度へと転換していくが、そのことは、仏教が近代国家に編入されることであるが、そこに見られる教育理念・教育目標・教育内容等を明らかにしてきた。 しかし、こうした体制化された仏教は、国家政策への批判的視点が失われているため、軍国主義的国家主義的風潮が高まるなかで同調し、戦意高揚の一翼を荷っていくことになるが、そのプロセスも民衆教育の視点から明らかにしてきた。 こうした大戦までの各宗派の教育と教化が、戦中を通して戦後へと時代の大きなうねりのなかでどのように変化転換し、何が受け継がれ、何が否定されたのか、その連続性と非連続性を明らかにし、戦後70年を経た今日の教育に何が提言できるのか、そして「改正教育基本法」で提起されている宗教教育の公共性の可能性を綿密に明らかにするのが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
膨大な資料群のために、年度初めに予定した第二次大戦時から現代にいたる研究が十分にできなかった。幸い研究期間の延長が認められたゆえ、収集した資料からその研究を深め、当初予定した仏教教育の連続性と非連続性の問題をまとめたいと思う。 我々の研究成果を発表するために予定した日本仏教教育学会企画の第7回仏教教育学研究会においてシンポジウム「宗教教育の公共性について――明治以降の日本仏教教育をもとに――」が2020年3月28日に大正大学で開催されることになっていたが、新型コロナウィルス感染拡大防止のために延期されることになった。このシンポジウムが再開されるまでに、出来れば上記の問題を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間延長のために研究報告書を次年度に作成することになったことからその費用が繰り越しとなるとともに、研究内容の調整と学会発表のための2回程度の研究会を開催する費用を見込んでいる。
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