研究課題/領域番号 |
17K04590
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
岩田 考 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (60441101)
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研究分担者 |
布村 育子 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (70438901)
冨士原 雅弘 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (30339238)
太田 拓紀 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (30555298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本教職員組合 / 教育研究全国集会(大会) / 教育研究全国大会(集会) / 民間教育団体 / 知識人 / 戦後教育学 |
研究実績の概要 |
最終年度である令和元年度は、研究実施計画よりも早く前年度に学会発表を行うことができたため、研究成果とりまとめの作業に注力した。3回の研究会と合宿を行い、主としてとりまとめに向けて各自が論文を執筆するとともに、教育学者を中心とした知識人、民間教育運動と教職員組合の三者が、どのような関係構造のもとで教育運動言説の形成に関与したのか、という点について総合的な検討を行った。 様々な知見を得たが、特に1950 年代の全国教研に関する検討から従来の評価とは異なるは次のような点を明らかにすることができた。すなわち、日教組執行部や講師団が枠づけした問題意識や課題が教研レポートに反映していったというよりも、執行部や講師団の意図や思いとはやや無縁な形で、個々の組合員の日常的な問題関心や課題が大量の教研レポートとして中央に集まっていたのが当時の教研集会だった、ということである。執行部は、毎年の総括で中央で考えた問題設定が教研レポートにあまり反映していかないことを繰り返し反省点に挙げ、講師団は大所高所からのアカデミックな問題関心がレポートや参加者に反映しないことを嘆いていた。しかし、視点を変えれば、個々の組合員の不断の教育活動の中の問題を自由な形や方向でレポートとしてまとめさせ、それを全国集会に集約して発表させたという点で、この時期の全国の教職員の自主的で自由な教育研究を促進したとみることができる。 1950 年代の全国教研が果たした役割は、教職員に対する「上からの啓蒙」などではなく、「現場教員自身による下からの教育研究エネルギーの活性化」であったと言える。 今後は研究成果をとりまとめた学術書を刊行する予定である。1950年代における知識人、民間教育運動、教職員組合の関係構造を明らかにし、同時代の出来事や中心的な人物・団体等の相互作用の産物として、戦後教育学を社会史的な文脈に位置づけ直すことを試みる。
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