令和3年度は、研究の目的の二つの柱(1)入門期英語教育における子どもの言語経験の蓄積・記録に基づく評価の理論的研究、および(2)小学校でのリサーチによる文字指導における評価の実態把握と評価方法の提案、について、最終年度として以下のことを行った。 まず(1)においては、昨年度に引き続き、コロナ禍において海外出張が不可能であったため、これまで収集したReading Recoveryの著作や資料において、とくにESL(第二言語習得)に関する書籍、文献を中心に、言語習得記録の在り方について示唆を得た。また、特別支援の領域での読み書きのつまずきの検討より、具体的な指導や実態把握・評価のあり方について日本および海外の議論を含めて資料を収集し、検討を進めた。 (2)については、小学校外国語の新教科書および令和3年度には中学校の新教科書を分析し、特にユニットゼロにあたる音韻認識の指導や文字指導の箇所について検討を行った。また学校現場において参与観察を継続的に行うことが難しかったが、児童の実態を表すワークシート等の収集・分析、担当教員への聞き取り調査を小規模ながら行った。個々の子供の実態に即した指導を考えるという点において、質的な分析に重きを置いた。 (1)(2)の成果をもとに、学校現場の教師が授業で活用したり、指導の参考となるような小冊子『小学校外国語読み書きのステップと評価』を作成した。小学校外国語活動および外国語科でゆるやかに音韻認識への気づきや文字指導を行う際の指導教材としての部分と、第2部では教師への指導の留意点を整理した部分を作成した。前科研費課題での成果物をもとに、本研究での成果を上記の通り加筆・修正(文字指導に入る前の気づきの部分、および中学校への移行への部分)し、さらに現場教員のフィードバックを得ながら修正したものとなる。今後研修や研究協力の際に配付し、活用していく。
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