本研究は、国際的な学力調査であるTIMSSデータの二次分析によって、1.日本の理科の教育到達度や児童生徒の態度に学級や学校及び家庭の環境はどのような影響を与えているのか、及び、2.どのような理科の問題が解きにくいのか、について答えようとするものである。 最終年度は、1点目の目的に関して次に示す分析を行い、これまでの結果を整理した。 具体的には、TIMSS2015の日本の公開データを用いて、小学校第4学年の理科に対する態度への学級規模の効果を、過年度に行った理科到達度についての検討と同様に、操作変数を用いた家庭の学習資源の多寡による多母集団の分析の枠組みで検討した。従属変数となる理科に対する態度については、理科が好きな程度と理科への自信の程度の尺度の得点を用いた。その結果、いずれの従属変数の場合でも、モデルの適合度は概ね良かった。ただし、いずれのモデルにおいても、各集団における学級規模の従属変数への係数の推定値やこの推定値の集団間の差は有意ではなかった。この結果からは、学級規模増減の小学校第4学年における理科が好きな程度や理科への自信の程度への平均的な効果は、学習資源の多寡によって分けられたいずれの集団においても見られるとは言えないことが示唆された。 一方で、当該の操作変数を通じた学級規模増の小学校第4学年理科到達度への平均的な効果は、家庭の学習資源が少ない児童には負であり、特に履修していない項目群の場合にこの影響を示唆するものであった。 2番目の目的に関しては、日本におけるTIMSS2015の小学校理科のテスト項目の特性と、カリキュラム及び各項目の内容との関連に着目した分析を過年度に行った。主な結果から、平均的に、履修している項目群の方が易しく、生物領域において、「人間の健康」のトピックの項目群は、この領域における他の四つのうち三つのトピックの項目群より易しいことが示唆された。
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