研究課題/領域番号 |
17K04600
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
光本 滋 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10333585)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大学改革 / 国立大学法人 / 大学行財政 / 大学ファンド / 国際卓越研究大学 |
研究実績の概要 |
(1)2021年、国立大学法人法の一部を改正する法律が成立し、学長選考・監察会議の設置、幹事の常勤化などの制度改正が行われることとなった。これらによりつくられる国立大学のガバナンスの状況は、学長選考プロセスからの教職員の排除、少数者による大学の意思決定の独占、これらに伴う政治・行政の介入など、現在国立大学などで起きている問題の改善にはほとんど寄与せず、むしろ深刻化することが予想される。各大学の動向を整理するとともに、改正法の問題との結びつきについて考察することを主眼として図書を出版した。 (2)内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が検討した「世界と伍する研究大学」の構想、制度化の内容の分析と問題点の解明にとりくみ、数次の研究会において報告を重ねた。政府が極めて少数の大学を「国際卓越研究大学」として認定し、10兆円の基金「大学ファンド」の運用益を用いることにより「世界と伍する研究大学」として育成しようとする枠組みは、従来の制度にはない政治による大学改革への強い関与を可能とする。このような「国際卓越研究大学」は、従来のアカデミックガバナンスと連動した大学行財政のあり方をくつがえす要素を持つものである。同時に、これまでの行財政の体制にも克服すべき問題があったことをあらためて示している。これらのことを国際卓越研究大学に関する法律案の内容、「世界と伍する研究大学」に関する検討の経緯、および関連する行財政制度の検討等を通じて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は2019年度に終了する予定であった。ところが、2020年2月以降、COVID-19の影響により、研究成果をまとめるために必要な研究会の開催、および研究補助者の確保ができなくなり、2021年度まで研究期間を延長する手続きを行った。 このような中、政府は2020年末に「戦略的大学経営」論および関連政策の結論をまとめ、2021年以降、順次法改正等を進めている。これらは、本研究課題の内容を見直す上で有効な視点を与えるものであることから、政策動向の分析を含めるために、研究期間をさらに延長し、2022年度までとすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度行った大学ファンド、国際卓越研究大学の問題に関する検討を進め、2020年度までの研究成果と総合する。 大学経営の改革に関する政策動向の検討は、一面では近年の政治主導による改革の中から提起された「戦略的大学経営」論の延長線上に位置づくものである。同時に、より長期にわたり行われてきた教育の目的を人的資本形成と見なす政策の帰結でもある。大学ファンド、国際卓越研究大学は両者が結びつくところに成立したものであり、2022年通常国会に法案が提出され現在審議中である。法案審議の過程で扱われた論点の整理、明らかになった問題の分析等をすすめ、成果の出版を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:COVID-19パンデミックの影響により、研究補助者の確保ができなかった。このことにより、予定していた謝金の支出がなかった。 使用計画:研究成果のまとめのための研究補助者の確保(1000円×60時間)。
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