研究課題/領域番号 |
17K04604
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤井 穂高 筑波大学, 人間系, 教授 (50238531)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | フランス / スイス / 幼小接続 / 幼児教育の義務化 |
研究実績の概要 |
本年度はフランスの3歳児義務化に焦点を絞り、研究を進めた。フランスでは2018年3月27、28日の「保育学校会議」において、マクロン大統領から、従来の就学年齢を6歳から3歳児に改めるとの発表があり、現在、法案がフランス議会に上程されている。フランスでは保育学校が整備されているため、従来から就学前の3歳児からほぼ100%の就学率を誇ってきたが、義務化の論理はどこにあるのか。マクロン大統領の演説によると、海外諸県における就学率の地域間格差、1日の格差(恵まれない家庭では、給食費を払わないために午後に学校に戻ってこない)、「言語の不平等」に端を発する社会的不平等の再生産などの点が問題とされている。 法案は、2018年12月5日付で国民議会(下院)に提出された。法案は「信頼される学校のための法案」という名称であり、現政権の総合的な教育改革案である。その中に、「義務教育の幼児期への拡張」という形で、義務教育の開始年齢を3歳からとする条文(2条)が盛り込まれている。現在も審議が行われている。 また、フランスの保育学校及び就学前の保育・幼児教育については、フランス戦略庁の報告書(Agacinski et Collombet, Une nouvel age pour l'ecole maternelle?, 2018)やOECDの報告書(Chiffres cles sur l'education et l'accueil des jeunes enfants en France, 2015)なども出ているため、そうした調査等も総合的に検討する必要がある。 審議が継続中であるため、本年度の論文執筆には至らなかったが、法案が成立した時点で論文としてまとめ学会誌に投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題はフランス及びスイスに関するものであるが、本年度も改革が進展しているフランスに焦点を絞り研究を実施した。 スイスについては、4歳児の義務化に関するスイス州教育長会議の報告書が2015年に出されて以降、全国的な動向は見られないが、2019年に新たな報告書が作成させることが予告されており(CDIP, Communique de press Harmonisation de la scolarite obligatoire : la CDIP tire un bilan positif, 2015))、次年度にはスイスを中心に検討を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度に当たるため、フランス及びスイスにおける幼児教育の義務化に焦点を当て、幼小接続の在り方を検討する。 フランスについては、3歳児義務化の政策動向をまとめるとともに、特に「保育学校会議」の主宰者が、脳科学者のCyrulnikであり、大統領の演説でも参照されていたDehaeneも脳科学者であることに象徴的に示されているように、今回の施策の背景に脳科学の研究成果があることは明らかであることから、次年度はこうした脳科学者の著書等も検討する予定である。 また、スイスについては、4歳児義務化に関する州教育長会議の報告書なども参考にしつつ、積極的に改革を進める州を中心に幼小接続の改革の具体層とその理論的根拠を検討する。
|