研究課題/領域番号 |
17K04612
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
辻野 けんま 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (80590364)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドイツ / 教育上の自由 / 学校監督 / 教育参加 |
研究実績の概要 |
本研究の眼目は、公教育をめぐる「国家」「教師」「親」「子ども」という諸主体間の関係性を制度レベル―実践レベルの往還において具体的に描きだすことにある。研究1年目は、先行研究・関連研究の整理と関連学会等における情報収集を軸に進め、研究2年目はそれらをふまえた研究の深化と成果の公開を行った。とくに、ドイツの就学義務(Schulpflicht)をめぐる諸問題に注目し、学校教育からの離脱(不登校やドロップアウト)が逆照射する公教育の正当性の問題に焦点化した。 2年目の研究成果としては、ドイツ側の連携研究者らとともに共同執筆を行ったことが特筆される。なぜ学校に通わなければならないのか、との問いは古くて新しいものと言えるが、公教育をめぐる権限や権利が、(I)国家の学校監督、(II)学校の自律性、(III)親、子ども、教員(集団)の教育参加、(IV)教員の教育上の自由、と複数主体に分散されているドイツにおいて、上記の問いに応える主体は一様ではない。さらにまた、この問いについて一国内のパラダイム内でアプローチすることには限界があるため、日独の研究者間でこの問いを共有化できた点が現時点研究の到達点と言える。 3年目の課題も明らかになり、とりわけ、学校教育のみならず家庭教育や社会教育をはじめとする学校外の教育が何をどこまで担うのかという、学校教育の射程(Reichweite)の現実について明らかにすることと、就学義務の正当性の問題を明確にすることが挙げられる。 課題点としては、当初計画していた現地調査の一部を3年目に持ち越すこととなった点があるが、すでに行った関連調査で一定の成果が得られたため大局に支障はない。また、3年目に行う予定だった研究成果の国際共同化が、逆に2年目の成果として一部繰り上げ可能となり、最終年度には補足調査および研究成果の総括と公開に専心できる状況にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究においては、当初計画では現地調査に重点を置いており、3年目にドイツ側の連携研究者らとの研究成果の発信を目指していたが、この前者と後者を入れ替えることとなった。具体的には、就学義務の正当性の問題について、日独の不登校に焦点をあてた共同研究に進展があったため、これを英語の論文として電子ジャーナルに公開するに至った。 一方の現地調査については、一部を次年度に持ち越すこととなったが、2年目においてもニーダーザクセン州およびノルトライン=ヴェストファーレン州で関連調査を行うことができたため、一定の成果を得るに至っている。研究の進捗状況は、以上を総合的に判断し、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、学校教育、家庭教育、社会教育の境界について明らかにしつつ、学校教育の射程と教員の「教育上の自由」の実体を捉える。そのための方途として、現地調査により教育行政―学校経営の関係性を事例的に把握するとともに、ドイツ側の連携研究者らとの協力により問題の検討を深化させ研究成果の国際的発信を目指す。また、発信だけにとどまらず、国際的な討議を通じて得られた新たな知見をふまえて、研究全体の総括を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張旅費が想定よりも安価となったために残金が生じた。本科研で必要な物品はその時点でとくに無かったために予算の振り分けを行わなかった。
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