研究課題/領域番号 |
17K04614
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松田 洋介 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80433233)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 技術教育 / 職業教育 / 中学校 / 産業教育研究連盟 / 教育運動 / 高度成長期 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、教育機会拡大期である高度成長期の中学校教育において職業技術教育がいかに再編されたのか、そこにいかなる日本的特徴があったのかを明らかにすることにある。今年度は、学校教育の担い手たちが職業技術教育の確立をめぐりいかなる試行錯誤をしたのかを、特に戦後から1960年代にいたる産業教育研究連盟に焦点をあてた検討を行った。 具体的には、産業教育研究連盟の機関誌の内容を検討し、その結果を日本教育学会第76回大会(2017年8月26日 桜美林大学)にて「戦後技術教育運動の展開と中学校教育―1950-60年代の産業教育研究連盟に焦点をあてて」というタイトルで報告した。そこでは次のような知見が得られた。 産業教育研究連盟は、1951年学習指導要領に顕在化した「地域主義」「生活体験主義」「啓発的経験」の色濃い技術教育を批判し、脱地域化、科学化、教育化を指向した。1953年の中央産業教育審議会の第一次建議の際には産教連のメンバーが主張した生産主義教育論が職業・家庭科教育を構成する原理として位置づけられ、産業教育研究連盟の趣旨は一定程度実現した。文部省の巻き返しがあり、生産主義教育の全面展開は回避されることになったが、1950年代後半に入り、日本社会の工業化を進める上で、技術教育の近代化が産業界からも主張されるようになった。結果的に産教連に集った官民含む技術教育改革派=産業教育創出派が強く批判していた戦前からの実業科・作業科のような職業教育は改められ、職業指導と同一視されていた職業教育のあり方も見直されることになった。1958年の学習指導要領では、職業指導は技術・家庭科と切り離れ、進路指導として特別活動領域に組み込まれることになった。しかし、その結果できた「技術・家庭科」は、技術教育としては体系化されたものの、社会経済的知識が切り離されたものとなり、教育課程全体の中では周辺化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産業教育研究連盟の1950年代から60年代にかけての技術教育・職業教育に関する言説分析を行い、戦後の技術教育の性格が形成されていくプロセスを一定程度明らかにする成果を出すことができた。もう一方で、技術教育研究会の分析についてはさほど進んでいないが、技術教育研究会の全国大会にも出席し、当事者との知己を得ることが出来、インタビュー調査に向けた下準備もできつつある。福祉国家システムに関する先行研究整理はさほど進められていないが、著作のリスト形成には着手している。
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今後の研究の推進方策 |
技術科が成立に至るまでのプロセスはある程度明らかになったので、「技術科」成立以降の技術教育がどのような変遷を遂げたのか、それが高度成長期の中学校教育をめぐる状況にいかに規定されいるのかを明らかにする。その際、1960年代以降の産業教育研究連盟の技術教育論の展開をひとつの参照軸とする。また、福祉主義の類型論・資本主義の類型論を参照し、そこで職業教育がどのように位置づけられているのかを検討し、日本的特長が戦後の技術教育をめぐる状況を理解するための手がかりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に、予定していたインタビューの実施と福祉国家論関係の書籍の購入を未実施であったためにその残額がある。平成30年度の研究計画とあわせて、積み残した課題に取り組み、残額分の研究費を使用する。
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