本研究の課題は、教育機会拡大期である高度成長期の中学校教育において職業技術教育がいかに再編されたのか、そこにいかなる日本的特徴があったのかを明らかにすることにある。 最終年度にあたる2022年度には、二つの学会報告を行うことができた。ひとつは日本教育学会第81回大会(2022年8月24日)に、「高度成長期における中等技術教育の変容―「技術・家庭科」成立後の産業教育研究連盟の実践思想に焦点をあてて―」というテーマで報告した。この報告は、産業教育研究連盟(産教連)の実践思想に焦点を当てながら、「技術・家庭科」成立後の高度成長期において中等技術教育の課題がいかに変容したのかを明らかにすることである。その結果、高度成長期以降、産教連は、技術教育について、労働現場とのレリバンス以上に、手を用いる=技能のある教科であることの意義を強調するようになったことなどが明らかになった。 もうひとつは、日本教育社会学会第74回大会(2022年9月10日)に、「教育機会拡大期における中学校技術教育の変容 1960-70年代の技術教育研究会の展開に焦点をあてて」というテーマで報告を行った。この報告は、1960年代から70年代にかけての高校教育機会拡大期に中学校技術教育の課題がいかに変容したのかを、戦後の民間教育団体のひとつである技術教育研究会(技教研)の「技術・家庭科」をめぐる議論に焦点をあてて検討するものである。上述の産業教育研究連盟とは対照的に、高度成長期以降も技術学をベースにした体系的な技術教育の実現を主張し、技術・家庭科の条件整備を重視した運動を展開したことなどが明らかになった。 研究期間全体を通じて、主として産業教育研究連盟・技術教育研究会に焦点を当て、その言説の変遷を検討することを通して、高度成長期の社会変容にともなう中学校技術教育の課題の変化を明らかにした。
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