本年度は、昨年度に予定していた政令市の小中学校を訪問し、学校事務職員に聞き取りを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症のため、訪問ができなかった。研究期間の延長が難しいため、昨年度までの聞き取り調査により得られたデータの分析をさらに進めることとした。 今年度は、収集したデータの分析、考察を行うため、アメリカ合衆国における研究に関する情報収集を主として行い、アメリカ合衆国における研究方法等を分析し、日本における実態分析、考察に取り組んだ。 アメリカ合衆国における研究について、参照したのは、学校予算の適切性の算定に関わる研究である。最近までの研究動向を調べるとともに、カリフォルニア州とメリーランド州に関する事例研究を基に、学校予算の適切性の算定のあり方について、その特徴を整理するとともに、日本への示唆をまとめた。 注目したのは、費用算定の方法の中で、専門家による判断に基づく方法と成功した学校をモデルとした方法である。特に日本において実現可能性があるのは、専門家による判断の方法であり、学校教育に関わる専門家の判断を尊重して、それを根拠にして学校予算の適切性を議論することが必要である。以上のような問題意識に基づき、日本への示唆として、学校における教育活動を想定した予算モデルの構築、教育と予算とを関連付けるための協議を学校において活発に行う必要性を指摘した。それにより、学校事務職員の専門性をいっそう生かして、学校事務職員と教員とが学校において活発に議論することの重要性を明らかにすることができた。
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