研究課題/領域番号 |
17K04626
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大場 淳 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (50335692)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大学 / ガバナンス / リーダーシップ / 連携・統合 / フランス |
研究実績の概要 |
本研究2年目の2018年度は、主として文献読解、国内外の訪問調査、国内でのアンケート調査の準備を進めた。 文献読解については、前年度に引き続いて、 文献等の収集・読解は、日本語・英語・仏語の文献について行った。大学の管理運営に関する研究は、他の組織とも比較しながら進めることが求められるとの観点から、経営学や組織論等の関連文献を含めて幅広く読解を進めた。 訪問調査については、国内では優れた改革を行っているとみなされている大学を対象として、ガバナンスやリーダーシップの実態についての調査を行った。また、国外についてはフランスの大学を中心に行った。同国では大学の連携・統合が進められ、規模拡大等に伴ってその運営の在り方の見直しが重要な課題となっており、ガバナンスやリーダーシップについて生じている諸問題についてインタビュー等を通じての調査を行った。 アンケート調査については、学内のガバナンスに関連して、私立大学を対象として意思決定の所在、学長リーダーシップの影響、それらが経営状態にもたらす効果等についてアンケート調査するための準備を進めた。具体的には、調査票の検討を行うとともに、調査票送付先の抽出を行い、調査票が出来次第発送可能となっている。 これらの活動を行うため、国内外の研究協力者と適宜打ち合わせを行った。特に国外の研究協力者とは共同出版の検討を進めた。また、日本高等教育学会、日本教育学会、フランス教育学会、日仏教育学会の研究大会で成果報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究では、大学ガバナンスは多様であり、リーダーシップの在り方も大学の組織文化に応じたものでなければならないとされる。1990年代以降の規制緩和(設置基準大綱化等)や国立大学法人化等によって大学の自律性が拡大する中で、ガバナンスやリーダーシップの重要性が政策文書等で指摘されているが、先行研究では当該重要性は大学自治が前提となっている。しかしながら、最近の大学改革では大学ガバナンス改革法を始めとして全ての大学に同じようなガバナンスの在り方を求めるものであって、これまでの先行研究の知見とは乖離している状況が伺える。 上記のような認識の下で、訪問調査においては、大学の自律性を前提としたガバナンスやリーダーシップの在り方を、当該大学の組織文化と照らし合わせて明らかにすることに配慮した。特に、政策文書ではいわゆる学長を中心としたトップ・マネジメントが強調されているが、大学ガバナンスの多様性に鑑みて、成功事例がかならずしも政策文書に沿った改革を進めていないといった仮説の下で、ガバナンスやリーダーシップ等の在り方の分析を試みている。 現在準備中のアンケート調査もそのような仮説に基づいて設計し、計量分析を行うこととしている。特定の学部に限定されるものの、私立大学教員を対象としてガバナンスやリーダーシップについて調査票はほぼ完成している。また、市販されている大学データを活用してDEAを用いた効果分析を行っており、アンケート調査結果と総合して分析することとしている。なお、私立大学を対象とするのは、国公立大学が政府の統制や強い誘導の下で大学運営が行われ、自律性が十分に担保されていないと考えられることから、ガバナンスやリーダーシップの研究対象としては不適切あるいは統制すべき事項が過大になると考えられるためである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続いて文献講読を進めるとともに、訪問調査・アンケート調査を行う。 訪問調査は、国内では引き続いて一般に改革が成功とされる大学を対象とするほか、前述のDEA分析で高い効果を上げている大学(特に不利な条件にある中で高い効果を示した大学)を訪問調査する。国外では、フランスやその他の欧州諸国を対象として訪問調査を行う。また2019年秋に仏ロレーヌ大学から研究者を招聘する計画があり、その際には統合を行った同大学の経験等やその他の知見に基づいて、日本の連携枠組について示唆を得るとともに、日仏共同研究を模索する。 アンケート調査については、本年度前半に質問紙を取りまとめて発送し、データを回収し、年度内を目途に分析を行う。回収率が低い場合は、回答の催促を行う。そして、以前に行った副学長調査結果や大学データを用いた計量分析を活用しつつ、総合的な分析を行う。 研究成果については、途中経過を含めて学会等で適宜報告する。また、日仏共同研究においては、フランスでの研究成果発表も予定する。出版については、内外の雑誌への投稿、書籍の分担執筆等によって行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に計画していた海外出張が別の経費(校費)で実施されたこと。当該予算については次年度に別途出張を行う予定である。また、年度末に購入を予定していた物品の納品が間に合わなかったが、これについては発注手続中である。
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備考 |
日・英・仏・西語で開設。
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