2020年度は,2019年度に実施できなかった海外訪問調査を予定したが,前年度同様,Covid-19の影響で実施できなかった。このため,文献等の購読,特に現地の情報を高等教育関係の専門誌(ウェブ版)を通じて得ることに努めた。Covid-19でガバナンス体制が変わる例は多くないが,マネジメントの在り方,特に危機管理において,大学の対応能力やリーダーシップの在り方が問われる様子が頻繁に窺われた。具体的には,アメリカ等のアンゴロ=サクソン諸国では各大学が独自にCovid-19対策を決めるのが一般的であるが,フランスを始めとする大陸欧州諸国では政府が方針を定め,キャンパスの開放,授業の在り方,遠隔授業の方法などについて大学に指示することが多く,各大学の裁量は限定的である。その反面,政府が学生支援等に積極的に乗り出し,例えばフランスでは,生活費の保護も政府の責任と捉えられ,財源の多くを公的資金に頼っていることが大学の自律性と反比例する様子が窺える。 また,2020年度は,アンケート調査の分析を続けた。アンケート調査は,組織文化に関する諸理論,取引費用に関する理論等を援用しつつ,大学の組織文化,経営の在り方,パフォーマンスの相関を図り,現在の大学ガバナンスに関する問題を実証的に探ったものである。データは質問紙の回答で得られたものを市販等の大学データと組み合わせたものを用いた。アンケート調査では,国公私立大学を対象として,組織文化(リーダーシップの在り方等)を尋ね,組織パフォーマンスをDEA(崩落分析法)を用いて測定し,取引費用に着目しつつ分析した。その結果,大学組織のパラダイムに適応したリーダーシップの在り方等が求められることが,環境適応には不可欠であることが明らかとなった
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