前年度までは研究園のカリキュラム案と実践記録をもとに、保育空間とカリキュラムの連関、環境がアフォードする実践の具体の検証、環境や空間の変化と、子どもの遊び、探究のプロセスから、「深い学び」を生み出す要素の抽出とその検証を進めてきた。 最終年となる本年度は、以下の2点を中心として研究を進めた。 ①これまでの研究成果として、研究園における事例分析を通して自然発生的な遊びから「深い学び」を生み出す事例を検証し、実践者の記録を整理したうえで、研究者の視点を加え、著書として公表した。(『学びが深まる実践へ1』ななみ書房)なお、本著に続く事例は、今後シリーズとして公表する。 ②建築家と協同して進めてきた保育空間としての園建築は、3月末に完成した園舎をもって一つの成果とする。保育者が実現したいと考える「学びが深まり、豊かなくらしが生成する空間」とはどのようなものなのか。一つひとつの小空間の意味と連関、それらをつなぐ導線、くらしを支える要素と遊びと学びが深まるアプローチ等を検証し、建築物(園舎)として完成した段階である。今後は、この空間の中で実際に保育者と子どもがくらし、そこで見えてきた空間とカリキュラムの関係を継続して検証する。自然発生的な遊びへの注目は、co-childrenによるカリキュラム開発につながるものであるという仮説のもと、本研究における研究園以外の事例も含め、保育におけるカリキュラムの構築について、引き続き検証を進める。 本研究は、建築家、研究者、保育者の協同により進めてきた。専門性の違う3者が協同することで見えてきた研究のあり様や、視点の違い、3者が検証するための記録のあり様などの課題も併せて検証を進めてきた。この成果については、別途著書にて公表する。
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