研究課題
基盤研究(C)
戦後日本の移動図書館の成立を実証的に考察すると,戦前・戦中期に持続し拡充を重ねた貸出文庫・巡回文庫の存在を基盤としながら,自動車という近代的装置を用いて,図書の配本を介しながら,図書館と地方(地域)とを結びつけることにより,読書環境の整備や図書館の設置,さらには読書会や座談会なの開催など地方文化の振興を果たす目的があった。戦後初期における日本の移動図書館とは,単に図書を運搬する装置ではなく,移動図書館の活動方法や自動車への装備等に,当時の図書館が目指す理念を体現していたことがわかった。
図書館学
近年,公立図書館による移動図書館の台数が減少し,活動が固定化・定型化する傾向の中で,戦後初期における「移動する図書館活動」には,見つめ直すべき図書館運営の源流や,地域とともに歩む図書館活動の本質が隠されていた。すなわち,地域に寄り添う移動図書館を図書館サービス計画全体の中でどのように位置づけていくか,という図書館活動の可能性が,戦後初期におけるさまざまな図書館による移動図書館活動に内包されていた。