研究課題/領域番号 |
17K04641
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
上垣内 伸子 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (90185984)
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研究分担者 |
向井 美穂 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (40554639)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 0~2歳児の教育 / 国内外の比較調査 / グループインタビュー調査 / 保育者の教育観 / 生活のなかの教育 / 美的環境を通しての教育 / 子ども同士の関わり / イタリア、ピストイア市の乳幼児教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、0~3歳児の質の高い教育を保障するため市独自で幼保一体化を図り、0~6歳までの一貫した教育・保育をおこなっているイタリア、ピストイア市の0,1,2歳児の教育に着目し、乳児期からの学びを支える保育援助のあり方と、基盤となる保育観が保育者集団の中でどのように共有化され教育・保育の質を高めることにつながるかを明らかにすることを目的としている。1年目(2017年度)は、ピストイア市での調査、2年目(2018)は、ピストイア市の調査分析と日本の保育への応用可能性について国内2学会で発表、日本の保育園での調査資料作成。3年目(2019)は、ピストイア市の教育に関する国内学会での発表、国内の保育園等での調査実施と国際学会での発表を行い、さらに対象を広げて国内調査継続と分析、国内外での学会発表のために研究期間1年延長を申請した。とこころが4年目(2020)は、COVID-19パンデミックのために国内の保育園での調査が実施できず、国内学会に2019年度に実施した国内での保育者対象の調査結果を発表したが、現地開催がなく討議が出来なかった。国際学会は2021年へ開催延期となった。そこで、2021年での学会発表準備と、翻訳協力を得てピストイアの0~6歳の教育に関する原書講読と討議を続け、再度の研究期間延長を申請した。2021年度は、オンライン開催の日本保育学会では2020年の発表の継続として、ピストイアの教育から見出した3つの特徴の国内保育者のとらえと自園の保育の再発見について発表し、オンライン開催のヨーロッパ幼児教育学会では、子ども中心で遊びを重視した理論的枠組みをもつピストイアの保育との共通性を土台に、日本の保育者が実践の意味を再発見し、新しいアイデアを導入して概念を広げようしたことを見出し報告した。感染拡大の隙間を縫って12月に36名の保育士を対象に発展的な調査を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19を理由に研究期間延長を行った2021年度には、国内での保育者調査を実施することができた。昨年度に計画し準備を進めていたものの、COVID-19パンデミックにより実施を見送らざるを得なかった国内調査であったが、デルタ株の感染拡大が落ち着いた12月に、乳児保育を経験している公立保育園の保育士36名を対象として、2020年2月までの調査と同様にピストイアの0-2歳児の教育に関する資料を提示し、12人ずつ3グループに分かれてのグループインタビュー調査を行った。 また、コロナにより調査実施が制限された期間には、2020年度から継続してピストイアの0~6歳の教育に関する原書講読と討議を続け、ピストイアの教育実践への理解を深めるとともに、ピストイアと日本の乳幼児期の教育の土台にある保育観の共通性や文化的差異性など、比較研究の背景にあるものを整理した。それらを踏まえて、国内学会(5月)、国際学会(9月)にてポスター発表を行った。国内学会(日本保育学会)では、ピストイアの保育特性について、2020年度の発表の続きとなる2報の発表を行った。さらに、保育者の特性についても分析して2022年度の発表の準備を行った。国際学会(ヨーロッパ幼児教育学会)では、国内調査による日本の保育者の保育観を整理し、ピストイアのそれとの共通性や文化的差異性に着目した分析について発表した。このように、2021年度については、国内外での学会発表、国内調査の実施、原書講読による理解の深化があったが、コロナにより調査実施の制限もあったことから、「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19パンデミックが継続する現状において、withコロナ時代における保育の在り方を検討し質向上を求める保育者の要望は強く、2021年度までの国内調査協力保育施設から、前回参加していない保育者を対象とする調査協力の申し出や、調査に協力したことで自園/自身の保育を振り返り実践の工夫を行った保育者からの発展的な調査の要望がある。そのことから、子どもの主体的な活動としての遊びを重要視し環境とのかかわりに価値を置くという共通性をもつ他国の保育からの照り返しによって自身の保育を再考することに保育者が意義を見出したと考えている。2020年度は、コロカ禍ではあるものの国内調査のめどが立ってきたので、国内の保育者を対象として発展的な調査を行い、2023年度での研究発表の準備と年度内での研究成果のまとめを行う。その際に、新たに得た情報としてコロナ禍でのピストイアの乳幼児教育実施の指針についての考察や、これまで行ってきた原書講読による分析に基づき、ピストイアの教育の特徴についてさらに検討していく。国内調査に関しては、2021年度および2022年度に実施する調査結果を含めた分析を行う。ピストイアの保育との比較の観点をもっての国内調査結果の分析と考察をすすめ、0~3歳の「学びの芽生え」を育む保育モデルの検討を目指す。これらを総合して研究報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には、国内学会、国際学会共にオンラインで開催され研究発表を行うことができたが、オンラインのために旅費の支出がなされなかった。また、国内調査もCOVID-19感染拡大が収束しない状況下で12月に実施した1回の調査にとどまった。国内調査については、当初の研究計画と目標の達成のためには、対象者と内容を吟味しながら発展的な調査を行う必要があると考え、コロナ収束が期待される2022年度での実施を計画し、この調査のための使用額を確保することとした。 2022年度の使用計画は以下の通りである。オンラインで開催される日本保育学会にて研究発表を行い、オンライン上での討議も行う。また、COVID-19の感染状況を見据えながら、可能な方法での国内での発展的調査の実施を試みる。この学会発表のための参加登録費と、国内調査に伴う消耗品購入や連絡用の通信費等の支出を予定している。ピストイア市の教育に関する原書講読のための翻訳者への謝礼にも使用する。最終年度として研究のまとめを行い報告書を作成することは、当初の計画通りである。したがって、2022年度の主な使途は、学会参加費、国内調査に伴う支出、原書講読のための翻訳者への謝金、報告書印刷費である。
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