研究実績の概要 |
0~3歳児の質の高い教育のために市独自で幼保一体化を図り、6歳までの一貫した教育を行うイタリア、ピストイア市の0,1,2歳児の教育に着目し、乳児期からの学びを支える保育実践と基盤となる保育観が保育者集団の中でどのように共有化され教育の質を高めているのか、それに触れた日本の保育者の保育観の再考にどのように資することができるかを明らかにすることを目的とし、ピストイア市と国内にて調査研究を実施した。2017年度ピストイア現地調査、2018年度ピストイア調査分析及び国内調査資料作成、2019年度国内調査(グループインタビュー調査7回)実施・分析、2020年度国内調査結果分析、2021年度国内調査(1回)と分析、ピストイア調査の詳細分析と原書講読、2022年度国内保育者対象の発展的調査の資料作成、実施(1回)と分析、ピストイア調査の詳細分析及び原書講読の継続。成果の学会発表は、ピストイアの0-2歳児の教育の特徴については国内学会6報(2018,2019,2022)、ピストイアの保育からの日本の保育の再考については国内学会5報(2019,2020,2023)、国際学会2報(2019,2021)。最終年度である2022年度はこれまでの国内調査参加保育士48名を対象に、新たな映像を加えた資料を提示し、国内調査結果と考察を報告した上で、先回の調査参加後の保育実践の工夫や保育観の変化についてのグループインタビューを実施、分析した。5年間の研究から、0-2歳児のケアと統合した教育を模索する日本の保育者が、底流に共通する子ども中心の保育観をもつピストイアの保育の①日常生活の中にある教育②子どもの全人的な発達を育む美的環境③子ども同士の関係と個の自発性の尊重という特徴に触れることによって、自身の保育観を再考し、種々の制約がある中でも保育者集団として工夫し実践していく意識醸成につながることが分かった。
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