研究課題/領域番号 |
17K04642
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
神長 美津子 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (80353390)
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研究分担者 |
日浦 直美 関西学院大学, 教育学部, 教授 (80181056)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミドルリーダー / 園内研修 / 保育者の力量形成 / 組織風土 / 同僚性 / 幼児教育の質 / 職業人としての成長 / 専門的成長の危機 |
研究実績の概要 |
「幼稚園におけるミドルリーダー育成のための現代的な研修システムの開発」研究の初年度である当該年度においては、ミドルリーダーの研修システムにかかる定量的な調査をする前段階として、①ミドルリーダーにかかる先行研究を分析、②前回の科研「保育相談力向上をめざす園内研修システムの開発」で実施した園長先生や研修担当教員による園内研修にかかる自由記述の分析、③ミドルリーダーに対するインタビュー調査を実施した。 ①については、興味深い研究としては、Dennis,S.E.,&O`Connor,E.(2013)による「幼児教育における質の再検討:組織風土と保育の質との関係の研究」があり、これについては、連携研究者の橋本祐子が継続研究を行うことになっている。 ②については、前回の科研調査「保育相談力向上をめざす園内研修システムの開発」で実施した園長と研修担当教員による園内研修にかかる質問紙調査の自由記述について、教員の資質向上の問題意識の視点から分析考察している。園内研修の必要性を指摘しながらも、それぞれの立場より園内研修の様々な課題を指摘している。今後、研究代表者神長、連携研究者の山瀬範子と廣井雄一が課題をまとめ、一部を質問紙調査にいかすこととなっている。 ③については、現在のところ、予備調査として保育者として成長してきた過程における危機や転機について、それぞれの立場から語ってもらっている。特に、保育者自身が感じている危機やその回避について分析する中で、その背景に同僚性や管理者からの支援などの組織風土の問題が大きいことに改めて気づく。今後の質問紙調査の項目づくりに生かしていきたいと考えている。 現在、①,②,③のそれぞれを研究を進めている段階ではあるが、平成30年度も3つの柱で進めながら、同時にそれらを総合しながら、研究テーマについての質問紙調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、ミドルリーダーにかかる定量的な調査の質問紙項目を作成するまでに至る予定であったが、その前段階でとどまっている。 その理由の一つは、先行研究の中に、同僚性や職業人としての成長、管理者からの支援等の園の組織風土が幼児教育の質に深くかかわることを指摘した論文があり、本研究のミドルリーダー育成のための研修システムと深くかかわるのではないかと考えた。このため、引き続き現在、園の組織風土や「専門的成長の危機」に視点をあてて、先行研究分析を行っている。また、前回の質問紙調査の自由記述の分析からも、園長と研究担当では研修に対する期待や問題意識の差をまとめている。この分析においても組織風土の問題が深くかかわることが明らかになっている。さらに、インタビュー調査は継続して実施しながら、「保育者の専門的成長の危機」の背景について考察している。 質問紙調査の前段階として取り組んできた先行研究分析や、園長と研修担当者の自由記述分析、またインタビュー調査のそれぞれが現在、独立して研究を進めている形になっている。したがって、研究計画の段階で予定していた質問紙調査が実施できず、現在の状況を「やや遅れている」と評価した。 ただし、現在継続している研究で取り上げている問題は、ミドルリーダー育成のための現代的な研修システムの構築に欠かせないものである。むしろ、急いで各研究をまとめて、質問紙調査を実施するよりは、それぞれの研究視点を深めて、その成果を質問紙の項目に生かしていくことが、研究テーマに迫るものであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半においては、現在進めている、組織風土と保育の質にかかわる先行研究分析と、園長と研修担当者が考える教員の資質向上に係る問題意識の差についての自由記述分析、保育者の専門的成長と危機についてのインタビュー調査を継続して行う。 9月に研究会を行い、それぞれの研究の成果について発表し、意見交換をしていく予定である。 その後、幼稚園においてミドルリーダーを育てていく研修システムについての質問紙調査を作っていく予定である。質問紙は、主に研究代表の神長美津子、連携研究者の野本茂夫、山瀬範子、廣井雄一が作成にあたる。研究分担者の日浦直美、連携研究者の橋本祐子、中橋美穂はインタビュー調査を実施していくことを考えている。 質問紙調査は、前回の科研研究「保育相談力を高める園内研修システムの開発」において実施した質問紙調査の実施地域と同じ地域(横浜市、兵庫県、栃木県等)の私立幼稚園で実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、質問紙調査を行うこととして、初年度に予算計上してきたが、実際には質問紙調査の前段階で終了したため、質問紙調査実施できずに終わった。次年度は、質問紙調査を実施する予定なので、当該年度の残額を次年度に使用する予定である。
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