研究課題/領域番号 |
17K04646
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研究機関 | 田園調布学園大学 |
研究代表者 |
内藤 知美 田園調布学園大学, 子ども未来学部, 教授 (10308330)
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研究分担者 |
井戸 ゆかり 東京都市大学, 人間科学部, 教授 (60331500)
小泉 裕子 鎌倉女子大学短期大学部, 初等教育学科, 教授 (80310465)
大野 和男 東京都市大学, 人間科学部, 教授 (40339487) [辞退]
田爪 宏二 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (20310865)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 保育者養成 / 初年次の学び / 保育の困難感 / カンファレンス / 子ども観 / 学びの順序性 |
研究実績の概要 |
2019年度は、保育者養成における初年次の学生の保育の学びのプロセスに着目し研究を進めた。免許資格取得のための既定の実習ではなく、その前の段階に、遊びを通して子どもと関わる実習を実施し、学生の子ども理解、保育理解について、アンケート調査・分析を行った。結果、初年次の学生は、子どもの個性や違いを認め、多様な子ども観を持つことがわかった。その一方で、初年次の子どもとの体験は、子どもと関わることの困難感を抱く契機となることが分かった。保育者養成の初期の段階における子どもと関わることの困難感は、保育者養成および現職段階の子ども観や保育観に影響を及ぼす。子どもと関わることの困難感が養成段階の早い時期に定着しないためには、学生同士の「カンファレンス」が有効である。同じ保育の場を経験する、共通の場を共有しながらも子ども理解がそれぞれ異なることに気づく、子ども理解について発言することで自分の保育観を表明する機会になるなどの効果が見られた。 また、ニュージーランドにおいて保育施設の実地調査および保育者のインタビュー調査を行った。ニュージーランドでは保育の専門家としての指針(Code)とスタンダードが示され、特に「社会、学び手、教育職、家族や拡大家族(whanau)」に対する責任の4つの視点から保育者養成が行われており、保育者が目指すべき理念が示された上で、カリキュラムが構築されている。また、保育者養成と現職教育の連携が進んでおり、生涯にわたる学びの段階が示されているため学び手にとって成長のプロセスが捉えやすく、保育者の成長意欲に結びつきやすい。さらに、保育インターンシップで、継続的に保育現場に関わり、子どもの学びの日常的な観察を行うことが、保育者としての保育の評価の視点を獲得する上で有効である。養成段階において、子どもとの「継続的関わり」と「日常的観察」の場を構築することが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、初年次の学生が既定の実習を体験する前に子どもと関わる活動を通して子どもに対する多様な見方や気づきを生み、これが保育の評価の視点に関わることが理解できた。また初年次に子どもと関わる体験は、「子どもと関わることの困難感」のイメージと結びつきやすい側面があり、それを払拭し成長意欲を育てるためには「カンファレンス」が有効であることが示唆された。またニュージーランドでの実地調査、インタビュー調査から、保育者の責任が示されたうえで、カリキュラムが構築されている、また継続的に保育現場に関わり、子どもの学びの日常的な観察を行うことが、保育者としての保育の評価の視点を獲得する上で有効であることが理解できた。 2019年度に実施した上記の研究成果に加えて、フォローアップ調査と研究のまとめとして、報告書ならびに研究発表等を行う予定であったが、公務多忙と実母の介護が重なり、研究の一部の進捗に遅れを生じた。なお、このため、研究の延長申請を行い、2020年3月に承認された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、保育者養成における「保育の評価」の視点の獲得においては、子どもの育ちと学びの「日常的観察」が有効であることが示唆された。単発に実施される実習やいわゆる免許資格のための実習のみでは、継続的な振り返りが生起せず、子ども理解や保育理解が深化しない。保育の評価の視点の獲得へとつながらないことが示唆された。。 また初年次からの体験型の実習等を通して、子どもの遊びへの関心や子どもの個性や多様性への気づきを育む機会となる一方で、最初に行う実習において、子どもとの関わりに対する困難感を抱く傾向が強いことも明らかになった。子どもと関わることの困難感の克服が、将来の保育者としての成長に影響を与えることが示唆され、カンファレンスを用いた子どもと関わることの困難感を払拭する教授方法の検討が必要である。 今後の研究では、本研究のまとめとして、保育者養成段階の学生へのフォローアップ調査を行うとともに、保育者アイデンティティの確立に寄与する「保育の評価」の視点の獲得とそのための保育者養成における学びの順序性について、カリキュラム、教授方法を含めて、試案を作成し、提示する。 また保育者の長期のキャリア形成を促す養成段階の学びとして、これまでの研究成果を報告書にまとめるとともに、保育者養成教育に関わる研究大会等で本研究の成果を発表し、研究の発信に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、公務多忙に加えて実母の介護のため、本研究の最終年度の課題の一部について、実施が困難であった。そのため、研究の延長申請を行い、2019年度に実施が困難であった研究のまとめの部分について実施する。具体的には、保育者養成段階の学生へのフォローアップ調査を行うとともに、保育者養成のカリキュラム、教授方法、学びの順序性についての試案を提示し、報告書を作成する。また本研究の成果を発信するために、保育者養成に関連する学会等での研究発表を行うことを予定している。
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