研究課題/領域番号 |
17K04650
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研究機関 | 桜花学園大学 |
研究代表者 |
上村 晶 桜花学園大学, 保育学部, 准教授 (60552594)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育者 / 子ども理解 / 関係構築プロセス |
研究実績の概要 |
本研究は、相互主体的関係論に依拠しながら保育者の子ども理解を関係性の視座から問い直し、保育者のキャリア発達に応じた「子どもとわかり合おうとする関係構築プロセス」を質的に明らかにすると同時に、プロセスの転機となる背景要因を見出すことを目的としている。 2018年度は、2歳児を担当する中堅後期の保育者(11-16年目)の保育者5名を対象に、2018年5月から2019年4月までの1年間において、月1回の頻度で保育者自身と子どもの関係性が変容したと感じる事例を中心に、半構造化インタビューを実施した。その結果、最終的に4名分の1年間を通じたデータを収集した。得られたデータは、テーマ分析と複線径路・等至性モデリング(TEM)で質的に分析した。その結果、以下の特徴が見出された。 1)関係構築を抑制した大きな要因として、クラス内の人的環境の変化に伴う本児集団双方対応困難感や、集団的一斉保育環境に伴う公平対応困難感、保育者自身の意図・原因追及志向、疑念相互察知感、前園保育観の呪縛などが見出された。 2)一方、関係構築を助成した大きな要因として、保育者個人の時間的・精神的ゆとり、即時介入抑止意識転換、関係構築速度緩和、自己選択尊重志向、保育者心情率直表現などが見出されたほかに、それらを下支えする実践コミュニティ要因として、園内外情報共有、職員間方向性共有、園内協働的サポート、子ども主体性尊重園風土などが助勢していたことが明らかになった。 中堅後期の保育者は比較的早期の段階で子どもとの関係構築に至ることが多く、子どもとの関係性を俯瞰的に捉えた多様な関わりを実践することが多いなどの一方で、保育者自身の過去の保育経験や実践的文脈に応じた固定観念などが影響しやすいことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に予定していた研究計画については、すべて完了することができた。 1)2018年度収集データについては、予定通り実施することができた。 2)2017年度収集データについて論文化し、学会誌に投稿した。 3)本研究成果の一部について、2018年度は、日本保育学会第71回大会(2018年5月)、EECERA 28th Annual Conference(2018年8月)、日本発達心理学会第30回大会(2019年3月)において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2017・2018年度に収集した過去2年間分のデータを総合的に整理・統合しながら知見をまとめる。また、必要に応じて、フォローアップインタビューを実施する。 整理したデータは、国内外の学会や研究会等で発表を重ねながら、論文として投稿していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実施については当初の予定通り遂行できたが、次年度の国際学会発表や最終成果報告書作成を見通して繰り越し計上した。
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