研究実績の概要 |
本研究は,明治期から大正期のキリスト教系幼稚園における音楽活動の実相を明らかにし,キリスト教系幼稚園の音楽活動が日本の幼稚園の音楽活動にどのような影響を及ぼしたかを解明することを目的としている。具体的には,①当時のキリスト教系幼稚園で行われた音楽活動の内容を明らかにすること,②①の音楽活動の基盤となった教育理念を明らかにすること, ③キリスト教系幼稚園と日本の幼児教育関係者および幼稚園とのネットワークを把握し,音楽面での影響関係を明らかにすること,を目指す。 平成30年度は,①および②に重点をおいて研究を進めた。①については,ひき続き明治・大正期のキリスト教系幼稚園に関わる日誌,職員録などの史料を収集・分析した。日誌の分析から,キリスト教系幼稚園では日常の保育のなかで少しでも機会をみつけて子どもを多様な音楽に触れさせ,音楽と生活をより密接に結びつけようとしていたことを明らかにすることができた。②に関しては,海外での学習歴をもつ保姆の学習経験を探るため,米国において宣教師および保姆の留学経験に関する情報を収集した。保姆の留学先の1つであったシカゴ大学では,当時の教育学部のシラバスについて調査することができた。またニューベリー図書館では,宣教師の講義メモおよび幼児教育関係者とのやりとりを綴った手紙を収集することができた。これらの史料をもとに,保姆の海外での学習内容を明らかにし,その学習経験が日本の幼稚園での実践に及ぼした影響について分析していくことができると考えている。
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