研究課題/領域番号 |
17K04674
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森 直人 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10434515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育理念 / 社会学 |
研究実績の概要 |
福祉国家化と連動した公教育の拡充が「自由化」「多様化」に向けた転機を迎える1970-80年代の日本で勃興した公教育批判の諸実践を対象に、それらを支えた教育理念・教育思想の社会学的分析に必要な方法論的検討と、当該諸実践の運動化/事業化を担った中核的実践者/関係者への聞き取り・パイロット調査および関連文書資料の収集調査を行なった。前者はエスノメソドロジー/「概念の論理文法」分析における議論・実証の蓄積を網羅的に検討するなかで、聞き取り調査のトランスクリプトと過去の文書資料とを同一の分析平面上で取り扱ううえでの指針を得た。後者は、研究計画で設定した3つの領域のうち、(1)公教育内部の実践改革運動としての個別化・個性化教育(運動)と(2)不登校児童生徒の受け皿として拡大していくフリースクール(運動)の関係者を対象とした調査、および、(3)もとは学習塾など教育産業として出発したのちNPO等への転換を果たしている多様な事業体関係者への予備調査が実施できた。市場原理のもとに置かれた教育産業の事業体のなかに市民社会的価値への志向や福祉ベースの実践の萌芽が潜在したこと、営利企業と非営利団体との境界が、教育理念/実践の面でも人的つながりのうえでも、相互浸透的/還流的であることを見出した。20世紀初頭の進歩主義教育・社会的再構築派が「social」概念に立脚しつつ展開した批判的実践を比較参照する本研究の基本視座の妥当性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育理念・教育思想の機能分析ではなく「概念の論理文法」分析をめざす本研究にとって必要な方法論的指針を得ることができた。すでにパイロット調査が一定程度進展していた個別化・個性化教育運動とフリースクール運動の関係者への本調査に加えて、民間教育産業とNPOとの境界/相互浸透的事例にあたる多様な事業体関係者へのパイロット調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の方法論的検討から得られた指針にもとづいて、収集したデータ・資料群の具体的な分析作業を進展させる。もとは学習塾など教育産業として出発したのちNPO等への転換を果たしている多様な事業体を調査対象として新たに組み込みつつ、公教育批判の論理と(準)市場の原理との順接/相克といった視角を加え、当初の分析枠組みを発展させる。聞き取りや文書資料と並行して、可能な限り具体的な教育実践の観察データを収集・参照して、教育理念・思想における概念的な論理文法の分析にフィードバックする。
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