本研究では、アメリカの州立研究大学が、その教育・研究・社会貢献に関わる各種の学術活動を、部局レベル・全学レベルの双方で、いかに枠付けながら戦略的・機動的経営につなげているのかについて考察を行った。アメリカの学術経営の実態を個別大学の事例に即して実証的に明らかにするとともに、日本の大学、中でも特に国立大学法人の学術経営に対する示唆を得ることを目的としている。研究最終年度には主に以下の3つの課題に取り組んだ。
①<学士課程教育>全学的観点に立った学士課程教育のイニシアティブという視点から、サービス・ラーニングとコミュニティ・エンゲージメントに着目し、これら全学レベルでの取り組みをいかに編成し、組織や教育プログラムとして学内に根付かせ、学生教育と地域貢献とを統合的に達成しているのかについて考察した。 ②<大学院教育>大学院教育を教育と研究、さらには社会に対する人材輩出の結節点として位置付け、その人材育成について、研究者養成と専門職養成という二つの機能を、部局レベルにおいていかに統合すると同時に分離させて経営を行っているのかについて検討した。 ③<ガバナンスとマネジメント>州立大学のガバナンスとマネジメントの基本構造について包括的観点から考察をまとめ直す作業を進めた。具体的には以下の3点に着目した。(1)外部者によって構成される理事会が最終意思決定を担う市民支配(素人支配)、(2)部門ごとに特化した専門職によって編成される全学執行部および全学機構を支える専門スタッフ、(3)学内で全学執行部と全学教員組織とが並立し、教学事項を中心に相互にチェック&バランスを行いながら運営を進める共同統治。これら3つを軸としながらガバナンスの実態にアプローチした。
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