これまで本研究では、太平洋中等教育資格(PSSC)の導入の背景とニュージーランドの影響、PSSCの質的改善と制度的変遷、廃止に至った経緯、各国独自の試験の導入の流れについて明らかにしてきた。最終年度では、サモア教育スポーツ文化省や中等学校での聞き取り調査、サモア独自の試験(SSLC)の内容分析を行い、教育の実情を踏まえ、PSSCとSSLCとの比較を行えるようにした。 更にサモア国立大学予科(Foundation Year)の教員への質問紙調査から、PSSC実施時と廃止後の学生の学力の変化についての意識を分析した。また統計資料より、中等教育から高等教育への進学者数の変化を分析した。それらの結果、PSSCからSSLCへの移行において、学力や進学行動での大きな問題はなかったことを明らかにした。その一方で、サモアでは学習成果の理論であるSOLOタキソノミーに基づいた、独自のカリキュラムや評価方法を開発しており、その枠組がPSSCよりも簡略化されたものであることから、教員が運用しやすいものになっていることを明らかにした。 こうした研究の結果として、サモアの中等教育のローカル化とは、カリキュラムと評価の運用可能性という点で説明できるようにした。併せてフィジーの南太平洋大学の研究者の聞き取り調査から、その批判的課題についての分析枠組みを検討した。 また、ニュージーランドの中等教育との比較をするため、ニュージーランド中等教育資格(NCEA)に関する文献を収集し、特に校内評価の位置づけを考察した。更にニュージーランドとサモア両国の中等学校の生徒の中等教育試験への意識調査も行った。 こうした研究成果を『三重大学教養教育院研究紀要』にも論説として発表した。更に国際学会であるオセアニア比較教育学会において発表する予定であったが、開催国であるサモアにて感染症発生のため中止となり、発表を延期している。
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