当年度は2019年9月と2020年3月の2度にわたり、フランスにおいては全日制学校2件、補習塾1団体、研究団体1件、ベルギーにおいては全日制学校1件、ドイツにおいては研究団体1件、ルーマニアにおいては全日制学校5件、関係団体2件、アルバニアにおいては全日制学校2件、コソヴォにおいては全日制学校1件(ただし2校の関係者が集まった会合で実施)を訪問し、参与観察および関係者へのインタビューを行った。 調査の実績として、ルーマニアやアルバニアにおいてはヒズメット系諸団体は、前年度の調査で観察された「トルコ系子弟の減少」と同時に「非トルコ系子弟の増加」という変 化と同時に、特に「トルコ系教員・職員の著しい減少」が見られた。当課題の初年度に訪れたアルバニアにおいてそれは如実に見られた。トルコ国家がヒズメット運動に関わるトルコ人のパスポート更新を拒否しているため、当地における滞在許可が出ず、結果、難民として難民受け入れ国(主にアメリカ)に出国しているためである。 また当年度は、トルコ国家とエルドアン大統領の圧力によってヒズメット運動が世界中で急激に力を失っている中、地元政府の圧力を受けながらもしぶとく生き残っているルーマニアのヒズメット系学校への訪問、そして、2018年3月に5人もの教員が国家によって不明瞭な罪状で逮捕されながらも、しぶとく教育活動を続けているコソヴォのヒズメット系学校への訪問が実現した。ルーマニアの首都ブカレストの学校ではアルバニアと同様、明確なエリート養成の意識と、インターナショナルな人材養成の目的をもって教育活動を行っている点が顕著であった。逆に、コソヴォの学校では、ボトムアップの要素が強い点が目立った。そしてコソヴォではトルコ政府からの圧力が隣国アルバニアに比べ大きく、トルコ教育省肝入りの学校がコソヴォに出現し、ヒズメット系の学校運営を圧迫しているという現状も見られた。
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