研究課題/領域番号 |
17K04692
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小野 由美子 早稲田大学, 総合研究機構, その他(招聘研究員) (20177273)
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研究分担者 |
小澤 大成 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (60253241)
前田 美子 大阪女学院大学, 国際・英語学部, 教授 (70454668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教育借用 / 日本型教育の輸出 / 途上国の教育 / 教員養成カリキュラム |
研究実績の概要 |
2017年度は3年間の研究の準備段階として位置付け、主として研究対象国の基礎的情報の収集と並行して、3か国を比較する分析するための枠組みの検討を行った。対象国共通の基礎的情報は、現行制度の理解と課題の把握を目的として以下の観点から情報を収集した。①教育制度全般、②現行教員養成制度、カリキュラム(プログラムへの学生の選抜制度を含む)、③教育政策文書、④対象国の教育開発を支援している開発パートナーとその主たる領域、支援アプローチの特徴、⑤学習者、教員をめぐる課題、ニーズ、⑥JICA技術協力プロジェクト・ドキュメントの分析(対象国のニーズの把握、達成目標、支援の方法等)。
Educatinal policy borrowing, educational policy transferをキーワードに文献検索を行い、先行研究のレビューを継続的に行った。開発途上国と開発パートナー間での教育借用を扱った研究は、先進国間の教育借用に比べると小数であるが、2000年以降増加傾向にあることが分かった。教育借用をモデル化した先駆的研究として Phillips and Ochs(2003)の4段階モデルがあり、先行研究でも用いられている。本研究でも本モデルを踏まえて分析を試み、教育開発の文脈から必要な修正を加えることとしている。イノベーション普及理論ではユーザーによる「知覚特性」の考え方が応用できそうなことが分かった。
カンボジアでの予備調査(2018年2月)から、日本型教員養成カリキュラムをパッケージとして輸出することはないが、理数科教育学のカリキュラム構成は日本のものを参照していることが明らかになった。カンボジアでの予備調査期間中、カンボジア国立教育研究所において開催された「教育研究セミナー」において、教育借用のモデルを中心に初年度の成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、カンボジアで予備調査(プロジェクト・リーダー聞き取り調査)を行ったほか、モザンビーク案件にかかわる専門家からインフォーマルな聞き取りを実施した。ともに、一見して日本型教員養成カリキュラムの輸出とわかるようなパッケージ輸出は行っていない。しかし、理数科教育法のカリキュラム構成(カンボジア)や、理数科教育法教科書の作成(モザンビーク)の原理の部分は日本のものを参照しているとのことであり、両国では、プロジェクトの成果物として認可され、採用される可能性が高い。一方、ミャンマーでは先導的試行として教員養成カレッジ5校を4年制大学へ格上げすることが決まった。プロジェクトでは当初、初等教育カリキュラム改訂に合わせて教員養成カレッジのカリキュラム改訂を支援しようと計画していたが、現在ミャンマーの教員養成改革の主導権を握っているのはUNESCOである。UNESCOはロンドン大学の専門家を投入して教員養成カリキュラム作成支援に注力しており存在感を強めている。今後、プロジェクトで教員養成カリキュラム改訂支援にどの程度かかわっていくのかが不透明である。しかし、日本の支援の特徴を浮き彫りにするためには、ミャンマーを事例にUNESCOの支援をフォローすることが欠かせない。
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今後の研究の推進方策 |
教育借用のモデルでは、借用する政策(制度・実践・考え方)が自国の教育制度の中に浸透し定着するまでを含むため、時間的に比較的長いスパンを要する。そのため、先行研究では、歴史的事象を扱うか、他国の政策に関心を持ち、採用を決定するまでを研究対象とするものがほとんどである。本研究で対象とするプロジェクトは現在実施中のものであるため、先行研究同様、決定から、カリキュラム開発までを扱うことになる。カンボジア、モザンビークともに理数科に限定されていることから、2教科のみ取り扱う。
今年度は、それぞれのプロジェクトにかかわる日本側専門家、現地でのカウンターパートへのアンケート調査、インタビューをもとに、日本型教員養成カリキュラムの特徴とメリット、導入の課題と対応策を、関係者がどのように把握しているかを明らかにする。また、本邦研修や現地でのプロジェクト実施の観察から、どのようなプロセスを通して日本型教員養成カリキュラムの考え方を移転しようとしているかも分析の対象とする。ミャンマーでは、UNESCO主導による教員養成カリキュラム改革の進展をフォローしつつ、国際機関の支援する4年制教員養成カリキュラムと、カンボジア、モザンビークで導入されようとしている日本型教員養成カリキュラムの考え方との異同を精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた図書の在庫がなかったため、若干の次年度使用額が生じた。2年次の助成金と合わせて、必要な文献購入に充当する予定である。
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