研究課題/領域番号 |
17K04694
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山崎 和美 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 准教授 (30513767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イラン近現代史 / 女性史 / 教育史 / 近代イラン / 女性教育 / 女性運動 / イスラームと西洋近代 / イラン社会と家族 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近代イラン(19世紀末から20世紀初頭、ガージャール朝末期とパフラヴィー朝初期)の女性による教育推進活動について、現在に至るまでの変遷も考慮に入れつつ、考察することである。イランでは特に、近代における女性知識人たちの尽力が根幹となり、女性の教育機会が醸成されてきたと言えるが、彼女らが伝統的な社会規範と西欧由来の近代性との狭間で葛藤しつつ生み出した「理想的イラン女性像」は現在のイラン女性教育にも大きな影響を与えている。現在のイランではイラン革命(1979)やイラン・イラク戦争(1980-88)を経て、教育におけるジェンダー格差はほぼ解消されたと言えるが、現在のそうした状況を生み出す状況に至るまでの女性運動や女性知識人たちの活動が開始したのが、イラン立憲革命(1905-11)前後を中心とする近代イランの時代である。 私は「IG科研(基盤研究A「イスラームジェンダー学構築のための基礎的総合的研究)」にも参加し、学会としては主に「日本中東学会」や「日本イスラム協会」などでも活動し、特に前者の学会では編集委員として、後者の学会でも学会誌の主査として査読などを担当している。2018年度はこれらIG科研や学会の公開講演会や公開セミナーなどで講演を行った。具体的には日本中東学会公開講演会「現代中東における結婚と離婚」、川崎市民アカデミー「イラン女性と100年:イラン版「連続テレビ小説」のヒロインたち」、イラン・イスラーム共和国大使館イラン文化センター「現代イランを生きる:「伝統」と「近代」の狭間で挑戦する女性たち」という公演である。また本科研とIG科研との共催で開催した家族保護法ユニットの研究会では「日本の家族法における子どもの権利」という研究会を企画し、司会を務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市民向けの公開セミナーおよび公開講演会の形や、書籍への論文執筆の形で、本研究に関わる研究成果を順調に発表してきた。ただし、書籍への論文執筆は主に依頼を受けて執筆している者であるため、査読付きの学術雑誌にも投稿したいと考えている。だが、日本で最大の中東研究に関わる学会の日本中東学会の学術誌『日本中東学会年報(AJAMES)』については、編集委員を務めており、主査として査読する立場であるため、現実的には投稿が難しく、もう一つの日本イスラム協会の学術誌『イスラム世界』でも主査を頼まれることが多いため、こちらも難しい。そこで、日本オリエント学会の『オリエント』に投稿する予定であり、現在執筆を進めている。 本科研での研究、調査および資料収集のため、2018年12月20日(木)から12月31日(月)まで、イランとトルコに出張した。ペルシャ語の多くの資料を収集し、教育省と女子学校を訪問した他、一般家庭2軒を訪問し、60歳代の主婦や40歳代の教育省職員の女性をはじめ、彼女らの家族(高校生や大学生、若者および高齢者)からも様々な話を伺い、イランの家族について検証することができた。また、教育省と女子学校の訪問時には、女子児童や女子生徒から話を聞くこともできたが、来年度も訪問させてもらい、校長をはじめとする教育関係者から女性教育・女子教育についての考えや実態に関し、様々な話を伺おうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、本研究に関わる研究会などでの発表などで研究成果を公表していくとともに、本研究における成果を1冊の専門書の形にまとめ、出版できるように尽力したい。本科研およびIG科研に関連して、イスラーム・ジェンダー叢書として出版計画が進んでいるが、そのうち『イスラーム世界の結婚(仮)(明石書店、2019年出版予定)』の原稿は執筆済であり、現在『イスラーム世界の教育(仮)(明石書店、2020年出版予定)』の原稿を執筆している所である。本科研に関わる内容で執筆した原稿のうち、『大学事典(平凡社)』は2018年に発行されたが、今後も『教養の中東イスラーム近現代史(仮)(ミネルヴァ書房、2019年出版予定)』や『イランの歴史を知るための50章(仮)(明石書店、2019年出版予定)』が発行される予定である。 2019年度もイランとトルコへの出張を考えている。同地でイランやトルコの女性と教育・家族に関わる資料を収集するだけでなく、一般家庭や女子学校への訪問を実現させ、教育関係者や女子生徒たちから、女性教育・女子教育に関する話を伺いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍を購入する予定でしたが、手続きが間に合いませんでした。次年度に、ペルシャ語・英語・日本語の書籍を購入したいと思います。
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