2018 年度実施状況報告書

社会的養護下の幼児の就学前教育機関利用・適応プロセスに関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号	17K04702
研究機関	東京成徳大学
研究代表者	坪井瞳東京成徳大学, 子ども学部, 准教授 (90438896)
研究分担者	保坂亨千葉大学, 教育学部, 教授 (30173579) 村松健司首都大学東京, 学生サポートセンター, 教授 (00457813)
研究期間 (年度)	2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード	社会的養護 / 児童養護施設 / 幼児教育 / 福祉と教育の連携 / 家庭観
研究実績の概要	社会的養護下の幼児、特に児童養護施設入所児の就学前教育機関利用における現状と課題について把握を行い、以下の知見を得ることができた。児童養護施設の幼児期に関する着目・調査等はこれまでなされておらず、不明瞭のままであったため、研究代表者が2015年に全国の児童養護施設に対する質問紙調査・インタビュー調査結果の整理を改めて行った。児童養護施設における就学前教育機関の利用に着目すると、幼稚園に大きく偏るという特徴があった。上記調査における児童養護施設の幼稚園利用に関するデータを検討した。調査結果から得られる課題とは、施設入所児童・施設が持つ特性が、一般的な「家庭」とのギャップとなっているということが示唆される。多様な家庭環境やニーズという視点に立脚した上で幼稚園利用を考えていく際、幼稚園が各家庭に求める規範との関連性とも併せて捉えていく必要がある。幼稚園教育におけるナショナルカリキュラムである『幼稚園教育要領』、『幼稚園教育要領解説』、中でも「特別な配慮を必要とする幼児への指導」を確認してみると、多様な家庭環境やニーズに対する配慮に関して、そこには解釈の幅の広さ、記述の曖昧さがある。社会的養護下にある子ども等についての具体的言及はされておらず、解釈を行う当事者にそれは委ねられている。そして、教員養成課程においても、保育士養成では科目として設置されている「社会的養護」に関する科目は無く、就職後の幼稚園教諭の研修の場などでも看過されている実態がある。こうした実態において、現場・制度・研究等で「家庭」概念の多義性の実態を踏まえ、戦略的にその多義性を解釈し、実践を行っていく必要があるという課題が見出される。子どもや家庭の多様性に目を向け、実態を知ること、育ちの多様性を認めていくこと、そして「特別な支援」を戦略的に「解釈を拡大」する理解と実践の必要性が確認される。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 4: 遅れている理由幼児教育関連の法令や体制の変化が大きい時期と重なり、現場が調査可能な状況であるかの確認している状況である。また、担当者らの校務の多忙により調査着手が遅れている状況である。
今後の研究の推進方策	１．教育委員会へのインタビュー調査上記「現在までの進捗状況」でも述べたが、申請当初は教育委員会に対する質問紙調査を計画していたが、インタビュー調査へと変更することとした。理由は、本件については把握している教育委員会は、小学校以降の内容においてもわずかな数であったという他の調査結果を参照したためである。インタビュー調査では、以下4点について調査を行う。①社会的養護を受ける子どもが、教育委員会が管轄する幼稚園内にどれくらいの人数がいるのかという実態把握はいかようになされているのか　②社会的養護を受ける子どもの保育に関する研修の有無、有るとすればその研修システム　③施設や子どもの幼稚園への就園を支えるために、幼稚園側の受け入れを支えるために何が必要と考えるか　④上記にかかわる内容について管轄している役所内の部署名２．施設と園双方への実地調査　　上記１のインタビュー調査を補完・具体化するために、施設と施設が利用している就学前教育機関とをセットでインタビューを実施する。３．理論整理・援用
次年度使用額が生じた理由	調査着手が遅れている状況であり、調査関連予算が未支出のため。2018年度実施予定であった調査予算の繰り越しと、2019年度実施予定の調査予算として支出をする予定である。