研究課題/領域番号 |
17K04705
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (10302358)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 幼稚園入園競争 / 就学継続 / 学業成績 / マイノリティ・スクール / インクルージョン |
研究実績の概要 |
本研究課題については、2017年度の主な研究課題は「RTE法の運用と実態分析」であり、以下の4点の研究の進捗があった。 1.RTE法の法規定・条文の詳細な分析; 「無償義務教育に関する子どもの権利法」そのものの条文解釈のみならず、同施行法、同法改正部分、州における実施法などの条文を読み込み、詳細に分析をした。その結果は、近日中に研究ノートとしてまとめ公刊する予定である。 2.現地調査の実施; 2017年8月と同年12月~1月の2回にわたりインド・チェンナイとデリーにおいて、義務教育制度の実態に関する予備的現地調査を実施した。マイノリティ・スクール・障害児施設・保護施設などでの義務教育の実態について関係者から聞き取りをして、義務教育法制のカバーできていない部分について調査した。 3.RTE法についての学会発表; RTE法についての分析及び現地調査の成果を、2回の学会発表にまとめた。一つは、「インド都市部におけるRTE法施行と私立幼稚園の入園競争」(日本南アジア学会第30回全国大会、日本語自由論題1、東洋大学、2017.9.23)で、RTE法施行の影響によりインド大都市部で義務教育就学前の幼稚園入園競争が激化している背景と現状・課題を報告した。もう一つは、「インドRTE法制下における就学継続と学業成績」(日本教育制度学会第25回大会、自由研究発表、東北大学、2017.11.12)で、RTE法施行により全員進級制度(No detention Policy)が始まったことによる学業成績への影響について報告した。 4.論文; インド都市部におけるRTE法施行と私立幼稚園入園競争、『教育のアーティキュレーションを問う:清水一彦先生退官記念論文集』(2017年夏脱稿、近日刊行予定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は2017年度~2019年度の3年間計画であり、その全体計画は概ね順調に進んでいる。2017年度のメインの研究課題は「RTE法の運用と実態分析」であったが、その点に関する研究は、法の分析、現地調査、学会発表、先行研究の検討のそれぞれについて、ほぼ計画通り進めることができた。現地の研究協力者との関係も良好で、様々なコネクションや資料を紹介してもらえる状況にある。 2018年度の研究を進めるにあたっての課題としては、デリーでの調査の具体的な計画ができていないことである。本調査実施の夏までに具体的な準備が進まなければ、今年度の夏の本調査はタミル・ナードゥ州のみに限定して実施する可能性も考えながら、研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
「社会的弱者層の義務教育機会保障分析」を主な課題とする2018年度の計画は、以下の4点に重点を置いて進める。 1.インド政府・各州政府のRTE法の各論点への取り組みを検討する。25%学籍留保問題、学校の認可、カリキュラム、障害児の機会保障といった、2017年度の調査で明らかとなってきたRTE法の論点について焦点化し、主として10年ほど前から現地で収集してきた新聞記事コピーの分析に、現在の政策分析を加えながら検討する。(各事項に関するミクロ的視点) 2.マクロな視点としての統計的数字の検討; 就学率の変化やドロップアウト、有資格教師数やRTE法除外学校数など、インドの義務教育全体を俯瞰するマクロな統計的数字を整理し、上記1と照らし合わせることにより、RTE法の社会的効果をマクロに把握する。 3.現地本調査の実施; 2018年夏には、上記1/2の結果を踏まえ、社会的弱者層(低カースト層、宗教的・言語的マイノリティ、OBCsと呼ばれる「その他の後進諸階級」、障害児など)の義務教育を受ける機会保障制度の運用と実態に関する調査を、デリーとタミル・ナードゥ州で実施する。 4.論文の投稿; 2017年度・2018年度の本科研研究の成果を、日本比較教育学会などの専門学会誌に投稿し、公表する予定である。
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