研究課題/領域番号 |
17K04705
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (10302358)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RTE法 / RTE法の改正 / minority school / トライバル・レジデンシャル・スクール / RTE Act in Tamil Nadu |
研究実績の概要 |
2018年度春~夏にかけては、RTE 2009と同法ルールの大まかな全分翻訳と解釈に多くの時間を費やした。その際の資料には、数度のインド現地調査で関係者から入手した、NIEPA Occasional Paper 33(Constitutional Amendment to Make Education a Fundamental Right:Issues for a Follow-up Legislation,Nalini Juneja),What is RTE?(NCERT,2014)等の資料を参考にした。それらの研究により、RTE2009の法制度体系全体とそれがそのような形に法制化された経緯が明らかとなった。2019年春現在、それらの翻訳資料を整理して、学会誌への論文投稿の準備をしている。 2018年夏には、2週間ほどの現地調査を行った。その調査で焦点を当てたのは、RTE法の実際の施行の実態調査である。南インド・タミルナードゥ州のチェンナイではマイノリティ・スクールとの関係について、タミルナードゥ州のウーティではSTの子ども達が通うトライバル・レジデンシャル・スクールについて調査をした。その成果は10月の日本教育制度学会で報告をした。 秋から年末にかけては、夏の調査時にタミル・ナドゥ州の教育行政官から入手した、同州のRTE法のガイドライン(Right of Children to Free and Compulsory Education Act-2009, Rules, Related Government Orders and Guidelines)を翻訳し内容を精査した。 2019年3月には、さらにRTE法の実態調査の補足を行った。デリーではRTEフォーラムというNGOやNIEPAで情報収集をした。チェンナイでは数校の私立小学校でRTE法の影響について調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に研究は推移しています。 2017年度、2018年度の研究の進展により、インド社会における様々な教育制度上の影響や問題点・課題点について明らかにすることができています。例えば、①RTE法の条文の内容を詳細に日本語訳し、解釈を加えたこと、②2010年に法が施行されてからの社会的動向を新聞記事などから詳細に整理したこと、③法施行後に話題となった諸点(障害児の取扱い、都市部における私立幼稚園の入園問題、④自動進級制度と学力低下問題などについて、条文や規則・ガイドライン・学校の実際など諸側面から検討を加えました。 昨年度までの研究の進展に関する課題を一つあげれば、上記のような、諸学会で報告をしてきた内容を論文化し、活字として発表することが遅れている点が挙げられます。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度前半は二つの課題がある。一つはこれまで2年間継続してきたインドのRTE法に関する研究のまとめをすること。第二には、インドにおける無償義務教育の施行に関する知見を踏まえて、現代日本の義務教育と子どもの貧困に関する研究視座を探求することである。子どもの貧困対策法や保育無償化法、高等教育無償化法などとの比較考察を行いたい。 2019年度後半にも二つの課題がある。一つは、インドのRTE法の補足的な研究をしてRTE法の実施に関する考察のまとめをすることである。第二には、前述の日本の義務教育制度と子どもの貧困問題についてのフィールドワークを行い、インドの義務教育問題との異同について考察を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた理由:昨年度、ほぼ計画通り研究経費の執行をしたが、3月末のインド現地調査にて予定していた費用(謝金の一部)が発生せず、やむを得ず小額を次年度に繰り越すことになった。 ・今年度の使用計画:2019年度の主たる研究テーマは、日本の「子どもの貧困」と義務教育制度の問題を、インドの義務教育制度の現状に照らして明らかにしていくことだが、そのためにもインドにおける貧困と教育制度の関係を調査する必要があり、1.インド現地調査、2.日本における子どもの貧困対策調査、3.それらの関連文献購入、4.年度末の研究成果報告書印刷などの費用が必要である。 今年度の研究予算を昨年度の残額と併せて上記のように使用させていただく予定である。
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