【2020年度に実施した研究の具体的内容】 1.無償義務教育に関する子どもの権利法(RTE法)とその社会的効果の研究: 本科研の当初の研究目的では、RTE法の法規定と制度的変化を中心に、そのインド社会に及ぼす社会的効果を、マクロ的な視点(社会的弱者層への学籍留保、障害児のインクルーシブ教育)の両面から教育制度学的に分析することを目的としていた。そこで、最終年度の2020年度は、これまで検討してきたRTE法第12条に関わる社会的弱者層への25%学籍留保問題や成績不振による原級留置問題、教員の資格と数の確保、州と国の財政負担問題などの各論点について様々な報告書矢資料にあたり、数字でその実態を明らかにした。 2.無償義務教育に関する子どもの権利法(RTE法)と日本の教育との比較教育学的研究: RTE法が施行される過程を上述のように分析する過程で、日本における義務教育制度問題との比較研究をすることも本年度の大きな課題だった。日本においては近年、子どもの貧困率の上昇、相対的貧困の中で成長する子どもの成長する権利がしばしば問題となっている。2020年度が新型コロナ禍でなければ、日本国内で様々な「子どもの貧困」の現場を調査し、義務教育制度問題との接点を探る計画であったが、それはかなわなかった。その代わりに、インドの幼児教育や障害児教育とRTE法がどのように関わり、影響されているかを研究することにより、インドにおけるRTE法の施行とその社会的効果に関する議論が、日本における子どもの貧困の議論とは相当に異なる位相で論じられていることを明らかにした。 3.本研究から次なる研究課題を導出: 以上により、RTE法がインド義務教育と貧困層の教育に与える影響が明らかとなった。それを踏まえ、さら地域において地域において文化的文化的さらに歴史的背景を踏まえた教育普遍化政策の検討が次の課題として導出された。
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