研究課題/領域番号 |
17K04708
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
早田 幸政 中央大学, 理工学部, 教授 (30360738)
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研究分担者 |
林 透 山口大学, 大学教育機構, 准教授 (20582951)
堀井 祐介 金沢大学, 高等教育開発・支援系, 教授 (30304041)
前田 早苗 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (40360739)
望月 太郎 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50239571)
島本 英樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (50299575)
工藤 潤 公益財団法人大学基準協会(大学評価・研究部), その他部局等, 大学評価・研究部長 (70360740)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ASEAN高等教育質保証 / インドネシア高等教育質保証 / ベトナム高等教育ん質保証 / 外部質保証 / 内部質保証 / アクレディテーション |
研究実績の概要 |
本調査研究では、人口規模、国土面積並びに経済規模において圧倒的優位を誇るとともに、世界有数の高等教育人口を擁するインドネシアにおいて、同国の高等教育質保証システムの中軸となっている「インドネシア国立高等教育アクレディテーション機構(BAN-PT)を中心に展開する「外部質保証」と、BAN-PTがとりわけ大学等を審査・評価する際にその有効性評価の対象として重視する各大学の「内部質保証」における各々の質保証のメカニズムとその運用実態、同国の高等教育質保証システム(とりわけ外部質保証システム)とASEAN共通の高等教育質保証の枠組みとの関係性、等を書面調査、実地調査の方法を用いて調査研究を行い、これを報告書として取りまとめた。 その調査研究と報告書の取りまとめに当り、外部質保証に係るシステムとその運用実態については、BAN-PTに対する実地調査を基にこれを行った。大学の内部質保証と、BAN-PTによるアクレディテーションの要請に基づく要件充足のための組織体制の整備状況等の確認は、「インドネシア国立大学・デポックキャンパス」、「アトマジャヤ大学・セマンギキャンパス」への実地調査を通じてこれを行った。このほか、インドネシアの高等教育システムとASEAN共通の高等教育に係る質保証枠組みに係る比較・分析は、BAN-PTを訪問調査の折の聞き取り調査のほか、これを補足するものとして書面調査の方法でこれを行った。書面調査に当たっては、既に本プロジェクトの中で翻訳を完了させている「ASEAN資格参照枠組(AQRF)」、「ASEAN高等教育質保証枠組み(AQAF)」の活用を通じてこれを行った。 このほか、ベトナムの高等教育機関の質保証を管掌する「教育試験・アクレディテーション監督局(GDETA)」の実地調査を通じ、高等教育を対象とする同国の内部質保証、外部質保証の制度・実態の把握も入念に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本調査研究は、高等教育の質保証を、大学の自己点検・評価を通じた「内部質保証」、アクレディテーション方式による「外部質保証」の両面から把握することを基本的趣旨とするものである。そこではとりわけ、学位等の「資格(qualifications)」を取得する上で必要なコンピテンシーを教育目標として定めた「学習成果(=ラーニング・アウトカム)」の測定・評価を通じてその教育の有為性を評価し、その結果を改善・改革につなげていくための営為として展開される「内部質保証」の適切運用の状況とその有効性評価を行う「外部質保証」の仕掛けを対象に調査研究活動を進めてきた。 本調査研究は、我が国大学等の認証評価との比較研究の一環として、ASEAN諸国や北東アジアの国々を対象にそうした高等教育質保証の把握・考察を目指している。こうした目的に即し、既に、マレーシア、インドネシア、ベトナムの調査を書面調査、実地調査の双方の手法を用いて行ってきた。併せて、ASEANの高等教育質保証の共通的な枠組みである「ASEAN資格参照枠組」、「ASEAN高等教育質保証枠組み」の全体把握も書面調査によってこれを行った。 そしてASEANの資格枠組み構築に大きな影響を及ぼしているオーストラリアの高等教育質保証システムの把握も書面調査等を通じて行った。そこでは具体的に、「オーストラリア高等教育質・基準機構(TEQSA)の調査を行ったほか、同国の分野別評価の実態把握の一環として「オーストラリア教職機構(AITSL)に係る調査も実施し、教員養成教育に係る質保証の実態把握に努めた。これらの調査研究は、本科研費研究が当初計画していなかったもので、この調査からも「学習成果」の測定・評価の在り方に係る大きな知見を得ることができた。 以上の理由から、当初計画以上に本調査研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、引き続き、ASEAN諸国の高等教育質保証システムの調査研究を進めていきたい。ASEANの高等教育質保証の調査研究は、上記マレーシア、インドネシア、ベトナムのほか、タイについてもすでに調査が終了している。現時点では、高等教育システムが整備途上にあると同時に、高等教育質システムが構築されているものの、未だ活動の初期段階にある国を対象に、そこで高等教育保証のチャレンジがどういう形で進められつつあるか、を実地に観察することが、大学における内部質保証、外部質保証の在り方を再認識し、場合によっては再定義する上で有益であると考える。具体的には、現時点では、タイやベトナムなどと国境を接するカンボジアの高等教育質保証システムの実態把握を計画している。 また、ASEANにおける公共政策やMBAに係る大学院を支える分野別質保証の在り方考察することも、ASEAN地域における分野別質保証の定着状況を把握する上で必要と考える。その際、分野別質保証を実施するのは、たとえそれがASEAN地域に存在する大学院であっても、分野別質保証を掌る外部質保証機関は、現段階では、欧米の専門職大学院アクレディテーション団体であることからこれら団体の評価基準やアクレディテーション手続の概要を書面調査を通じて行うこととしたい。このことと併せ、ASEANの高等教育質保証の共通資格枠組の形成に大きな影響を及ぼしたEUの同資格枠組の概要を「欧州高等教育アクレディテーション協会(ENQA)」の公的文書を手掛かりに内容把握を行っていくこととしたい。 このほか、北東アジアの国々、具体的には、中国、韓国の高等教育質保証に係る進展の状況を書面調査等を通じて行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度、ベトナムの高等教育質保証システムの実地調査を2名体制で計画していた。しかしながら、関西国際空港を起点に同国に向け出立しようとした内1名が、折からの近畿地方を襲った台風の影響で関西国際空港の使用が不能になり、当該調査自体を断念せざるを得ない状況となった。当該年度の未使用分の相当額は、その際に発生したものである。このほか、書面調査等担当者について、その分担調査が所属大学の基礎研究費で賄うことができたため、結果として残余が生じた。 次年度は、ベトナムに関しては、大学機関別質保証システムの調査は1名体制にて現地調査に赴きその調査そのものが完了したので、追加の実地調査として、同国の公共政策大学院を対象とした専門職大学院の調査を行う。併せて、未調査国で、かつ高等教育質保証システムの整備が発展途上の段階にあるカンボジアにおける同質保証に係る制度と実態の調査を現地調査を通じて行うこととする。
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