研究課題/領域番号 |
17K04713
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松岡 亮二 早稲田大学, 留学センター, 准教授(任期付) (80637299)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教育格差 / 社会階層 / 地域格差 / 子育て / 国際比較 / 教育政策 / 教職課程 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
2019年度中の主な業績は、一般向けに教育不平等を解説した単著(「教育格差:階層・地域・学歴(ちくま新書)」筑摩書房)を刊行したことである。本課題や以前の科学研究費課題で研究し発表してきた査読付き論文20編を柱に、日本の教育不平等の実態を包括する構成とした上で、各章の項目に適した日本で回収された大規模データを再分析し、一般の読者にとって分かり易い形で提示した。 第1章では「社会階層と社会移動に関する全国調査」(SSM)と「階層と社会意識研究プロジェクト」(SSP)の2015年度調査を用い、戦後日本社会には常に出身階層・出身地域といった「生まれ」によって到達学歴などの差があることを解説した。第2章では厚生労働省による「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」を用い、未就学段階で親学歴によって様々な格差がすでに確認できることを示した。続く第3章と第4章では「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS)と大都市Xで回収された個票データなどを用い、義務教育段階における家庭間・学校間の格差を描いた。 第5章では「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」を分析することで、日本の高校階層構造は生徒を「生まれ」によって間接的に隔離する制度であることをデータで示した。第6章では国際比較を行った。日本の「教育格差」(「生まれ」と教育成果である学力・学歴などの関連)の程度がOECD諸国の中で平均的であるデータを提示し、日本が「凡庸な教育格差社会」であることを指摘した。最終章である第7章では全章で示した研究知見とデータを土台に政策論を展開した。また、独自に収集した日本全国の教職課程科目についてのシラバスのデータを用いて、日本の大半の大学では「教育格差」を学ばずに免許取得が可能である現状を明らかにし、「教育格差」の必修化を提言した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りの進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
入手可能な大規模個票データを分析することで,教育格差の実態とメカニズムを多様な観点から実証的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
執筆に集中することで、国内外の学会発表などを行うことができなかったため。
研究を進展させるために必要な物品・図書を購入する。また,データの整理などのために研究補助者を雇用する。
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備考 |
松岡亮二. (2019),「シリーズ「学力」新時代④「緩やかな身分社会」を改善する二つの処方箋: 日本が隠し続けるSES(社会経済的地位)格差」中央公論2019年9月号, pp.144-161. 松岡亮二. (2020),「1000字でわかる教育格差」(1000字計4回・文化面に掲載)読売新聞 *以上は、本研究課題(教育不平等)の学術的・社会的意義を広く周知するために一般向けメディアへ寄稿した例。
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