研究課題/領域番号 |
17K04716
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
東 自由里 京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (80269795)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マンハッタン計画 / 米国国立公園局 / 記憶遺産 / 産業遺産 / 原爆投下 / 冷戦後 |
研究実績の概要 |
(1)本研究の初年度となる平成29年度は、調査の対象となる非営利団体Atomic Heritage Foundation(米国ワシントンDC本部), Los Alamos Historical Society(米国ニューメキシコ州)、米国国立公園局(米国ワシントンDC本部) の関係者と連絡をとり、定期的に最新情報を入手するように努めた。また、これらの団体とは今後の現地調査が円滑に実施できるように本研究の理解と協力を求めて信頼関係作りを積極的に行った。 (2)広島・長崎の原爆投下に繋がった「マンハッタン計画」は、原爆製造に関連する三つの施設を国立公園として保存することが2015年オバマ政権時代の議会で決定した。本研究開始年度に政権交代があったものの、米国国立公園局がまとめた「マンハッタン計画基本文書」(2017年発刊)を読む限り、記載事項の目立った変更はみられなかった。 (3)本研究は、最終的に日米両国民が共有可能な原爆展示の条件を導き出すことにあるため、本年4月にリニューアルオープンした広島平和記念資料館(東館)の展示の分析も行う必要があった。リニューアル前と比べて、どう何が変わったのかを調査するとともに、広島平和記念資料館の今日まで開催されている展示検討会議の資料分析を行った。 (4)本研究の成果の一部は夏に国際学会(ラドバウト大学、オランダ)で発表を行い、また歴史的事件の保存事業に関しての論考を『歴史を社会に活かす』(東京大学出版会2017年発刊)の中にまとめて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は本研究を開始する初年度にあたるが、夏に実施する予定であった米国ロスアラモスでの海外調査を次年度まで延期することとした。主な理由は次のとおりである。 (1)ロスアラモス歴史協会の関係者が当該年度に来日する可能性があることを受けて、研究代表者は広島とロスアラモスの関係者の今後の人的交流の経緯を見守る必要があると判断したためである。 (2)分析対象となっていた「マンハッタン計画、基本文書」は2017年度中に米国国立公園局より発刊されることになっていたが、完全版が入手可能になったのは年末になったためでる。また追加調査として本研究と関係が深い、広島平和記念資料館の東館がリニューアルプロジェクトを終えて開館したため、展示デザインを担った主要な関係者にも聞き取り調査をする必要がでてきた。
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今後の研究の推進方策 |
海外調査は米国東海岸、西海岸とそれぞれの地域に夏と春にわけて2018年度中に行う。ロスアラモスでは下記三つの調査をもとに公教育とツーリズムの接点を体系的に捉えていく。(1)ニューメキシコ州、ロスアラモスにある二つの公共施設の視察と資料収集:ブラッドベリー科学博物館(および近隣のロスアラモス歴史博物館。(2)ロスアラモスと「原子遺産財団」との関係を明らかにする。(3)ロスアラモス・ウォーキングツアー「核の時代へ」に参加し、町の歴史がどのように語られているかを調査する。
上記ロスアラモスでの調査に加え、東側では米国ワシントンDCに本部を置く「米国国立公園局」と「原爆遺産財団」の関係者への聞き取り調査を実施する。ロスアラモスと「原子力ツーリズム」に関する先行研究を分析するとともに、地元、州、エネルギー省、連邦政府などさまざまな組織との関係を調査しながら「原爆都市」の歴史的遺産の保存と継承がどのように実施されようとしているのかを分析する。また「マンハッタン計画」の名前の由来となったニューヨーク市では、「歴史的現場」保存とツーリズムとの関係も調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年夏に実施する予定にしていたロスアラモスでの調査を行わなかった。まずは、調査対象となっている米国ワシントンにある「原子力遺産財団」及び「米国国立公園局」の先行研究を入手して分析する必要があり、この二つの団体関係者への聞き取り調査を終えてからロスアラモスを視察・資料収集したほうが効率的であると判断したためである。
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