研究課題/領域番号 |
17K04720
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
松浦 真理 帝塚山大学, 教育学部, 教授 (10352923)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヨーロッパにおける位置づけ / 学校組織と親の信頼関係 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の3点について知見を得ることができた。 先ず、ヨーロッパ全体の親関与教育の傾向の中にオランダの親関与の状況を位置づけられたことである。Paseka A. and Byrne D. (ed.) (2020) によると、教育や保育において親の「関与」が認識され、重視される経緯についての国際比較研究は散見されたが、施策や実践についての広範囲な比較研究はほとんどなかったということで、この文献では福祉国家レジームによる西欧国家のグループ分けに基づいて、比較研究がなされていた。これまでの自身の研究とここでのオランダの記述を重ね合わせながら、ヨーロッパにおけるオランダの位置づけを試みた。 次に、学校組織と親とのどのような関係が親関与をスムーズにするのかについての知見を得たことである。学校組織論の観点から露口(2012)は、「不確実性が存在する状況下において、他者・集団の行為を認知した結果として形成される「他者に対する期待感」に焦点を置くことが「信頼」である」とし、保護者を顧客とみる「契約的信頼」と「関係的信頼」があるというが、後者の構築こそが、学校や保育機関と親との関係をスムーズにし、一方だけに負担を強いることなく、子どもに好影響をあたえるものではないかとの知見は、そこから実証研究をすすめていくための基盤となるであろう。 これらに加えて、親関与研究の背景となる研究として、日本の幼保小連携のこれまでの経緯と現状についての批判的な見解を論文(帝塚山大学教育学部紀要第3号、pp1-11)にまとめることができた。幼保と小の対等で強力な連携が望ましいなか、高校卒業までに子どもに身につけさせたい3つの力をシンプルに考えることなどを提案している。 2022年度はコロナ禍で延伸をお願いしてきた研究の最終年度であることを踏まえ、これらの知見をベースにして実証研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本務校における業務および地域連携に関する業務について、効率よく進めることができなかったことと、私的な事情(従来以上に難しくなった介護問題)により、十分な時間を研究にかけることができなかったことが、最大の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに文献研究から得た知見、および、現地の団体から得る最新の施策や現状に加えて、コロナ拡大の状況が収まっている今年度は現地での調査計画を立てる。 具体的には、夏ごろを目途に現地団体及びいくつかの現場とやりとりをして、秋以降の早い段階で現地調査を実施できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】 新型コロナウイルスの影響を受けて、海外出張制限の解除が予測できない中、現地での調査計画が立てられず、実施できなかったことが大きい。
【使用計画】 未使用分のほとんどは渡航及び実地での調査分析に使用する予定である。
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