研究課題/領域番号 |
17K04722
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
江藤 智佐子 久留米大学, 文学部, 教授 (30390305)
|
研究分担者 |
椿 明美 札幌国際大学短期大学部, 総合生活キャリア学科, 教授 (00320581)
和田 佳子 札幌大谷大学, 社会学部, 教授 (80248666)
吉本 圭一 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30249924)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 学修成果 / 職業コンピテンシー / 職業統合的学習 / チューニング |
研究実績の概要 |
前年度実施した韓国訪問調査から得られた知見として、韓国では行き過ぎた学歴主義の見直しとして能力を中心とした評価システムとしてNCSを国家的に実施しており、専門大学や一部の大学の学習モジュールとして採用するだけでなく、企業の採用の際にもNCSを活用することが推奨されていた。中でも学校から職業への移行に必要な職業能力の基礎レベルとして、全職種共通となる「職業基礎能力」が策定されていた。日本では同様の基礎レベルの能力評価指標として、社会人基礎力、職業能力評価基準、学士力などが挙げられるが、職業能力の基礎レベルに着目し、日韓チューニングを行ったところ、対人能力に関する項目はいずれの職業能力評価指標にも共通性が見られたが、職業倫理に関する項目は日本ではあまり着目されていないということが明らかになった。さらに、諸外国の先端事例とビジネス分野の職業能力について比較検討を行うため、豪州AQFの訪問調査を実施し、日韓豪の3か国の比較検討を行った。諸外国のNQFモデルとなる豪州AQFからは制度設計と改訂後の状況、運用方法が、韓国からはコンピテンシー評価のための分野分類とNCSを活用した教育機関と産業界の能力評価の連携方法等が日本における汎用性の高いビジネス分野と専門と職業が直結しづらい人文社会学系の学修成果に対する示唆を得ることができた。 分野間チューニングにおいては、7専門分野において分野間、レベル横断的なチューニングを行った。その結果、態度、応用の能力項目においてはビジネス分野だけにとどまらず、他分野との共通性が一部見られた。それはとりわけ基礎レベルとマネジメントレベルにおいて顕著であった。技能の習得プロセスの特徴として、積み上げモデルが見られる分野においては、型から応用までを訓練型で習得する表現として「守破離」が日本的文脈においては理解が得られやすいことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果の取りまとめ段階において国際比較ならびに成果報告書のとりまとめを予定していたところ、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、中止・延期となった。さらに研究を精緻に取りまとめる予定のため、研究期間を延長し、研究成果の公表、取りまとめを次年度行うことにした。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題によって日本のビジネス分野の持つ特性が、ホワイトカラーを中心とした専門性を特定しづらい広範かつ汎用性の高い能力形成があることが解明された。これはジョブ型労働市場の特徴を持つ諸外国のNQFにおいてもビジネス分野には同様の汎用性という特徴が見られた。しかし、この汎用的な能力は、基礎的な部分とマネジメント部分に顕著に表れているという特徴も明らかになった。つまり、ビジネス分野は基礎レベルにおいてはどの職種にも通用するような汎用能力の獲得が求められているが、高次レベルのマネジメント能力の獲得に至る能力形成に一元制は見られず、多様かつ広範なキャリアパスという特徴を有していた。それゆえ、ビジネス分野を到達目標とした学修成果のプログラムモデルや可視化が構築しづらいという傾向があった。他分野との転用可能性が高い基礎レベルの組織人としての基礎能力と高次のマネジメント能力とい新たな課題が生じた。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大により計画していた研究会等の開催が中止となり、研究発表も延期となった。また、研究分担者が遠隔地の所属しているため、研究成果の取りまとめの協議も困難となった。そのため、研究成果をより精緻にするために、次年度に学会発表、研究成果の取りまとめを行う予定である。
|