持続可能な世界を目指し、生徒自ら地球的および地域的な課題の解決策を探る「地理的探究に基づく学習」に注目した本研究は、4年間を通して以下のような研究成果を得ることができた。 ・初年度の2017年度では、アジアの地理教育の動向として、香港とシンガポールの中学校カリキュラムおよび教科書を含む文献研究を行い、地理的見方・考え方を導く地理的問いを中心とするカリキュラム構成を明らかにし、その研究成果を国内外の関連学会で発表した。また、日本の高校地理教育の動向として「地理総合」の新設背景と内容構成について国際発表を行った。 ・2年目の2018年度では、韓国の沈 光澤教授(晉州敎育大学)、中国の董玉芝教授(延辺大学)と共同で、日中韓の高校カリキュラムの比較研研究を行い、コンピテンシーを重視するカリキュラム構成を明らかにし、その研究成果を韓国の地理教育学会で発表した。 ・3年目の2019年度では、これまでのアジアの国や地域の中等地理カリキュラム及び教科書分析を通して、「地理的探究に基づく学習」の導入と展開を明らかにし、その結果を踏まえながら、日本の文脈に合わせたモデルを提案し、高校の新設科目「地理総合」での適用を試みた内容をイギリスの地理教育学会で発表した。 ・最終年度である2020年度では、これまでの研究成果を踏まえ、力強い教授法という観点から次のような理論の再構築ができた。力強い教授法といて「地理的探究に基づく学習」は、教科・教師・生徒という3つのエネルギー源から成り立つ。教科は学問的知識 (概念) を基盤とする必要がある。そして、教科内容を教えるために教師は学問的知識に基づく問いを用いたカリキュラムの構成を試み、その問いを生徒に合わせた発問に換えた授業づくりを行う。 それに対して、生徒は自ら答えを探し知識・技能を活用しながら学習を進むことができる。
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