研究課題/領域番号 |
17K04731
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
藤川 聡 北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (20710908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 技術科 / 失敗体験 / 原因帰属 / 教訓帰納 |
研究実績の概要 |
本研究は,中学校技術科の製作学習における失敗体験について,失敗の原因帰属と教訓帰納の視点からその教育的意義を解明し,効果的な指導の在り方の検討 及び指導モデルの開発を目指すものである。平成30年度の研究実績は以下の2点である。 1点目は,文献研究から本研究の新規性・有用性がさらに強化された。具体的には,これまでの研究では原因帰属と教訓帰納の関連についての議論は殆どみられず,別々に研究が進められている状況が明らかになった。国内及び海外の文献を相当数調べたが,原因帰属と教訓帰納の関係性については,それらの可能性を示唆する記述は一部でみられるものの,相関関係や因果関係について明らかにしようとする研究は,筆者らによる研究以外には発見できなかった。技術科の製作学習においてそれらの関連を明らかにすることは失敗場面における個々の支援に有用な知見を提供できると考えられる。上記の文献研究より,本研究の新規性及び有用性が強化できたと考えている。 2点目は,これまで筆者が明らかにした原因帰属及び教訓帰納に関する知見に基づき,製作学習の失敗場面における効果的な指導法について考案し,その実践例を示した。具体的には,製作場面で出現した生徒の失敗場面から問題解決学習へと展開させる指導法を開発した。上記では,失敗場面を積極的に活用することにより,生徒の思考力・判断力・表現力を育む指導法,及び,学びに向かう人間性等を育む指導法の具体を示すことができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は,文献研究や視察,研究協力者との打ち合わせが充実し,カリキュラムの具体について構築することができた。しかしながら,年度当初に授業実践及びアンケート調査等の協力校が十分に確保できず,それらが実施できなかったため,授業実践における研究成果を十分に示すことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は,平成30年度に積み残された部分,すなわち,授業実践を通じて明らかにした技術科の製作学習における達成動機づけの原因帰属理論,及び,教訓帰納についての知見を学会で発表するとともに,年度中の論文投稿を目指す。加えて,2年間で得られた知見をもとに,達成動機づけ及び教訓機能を促す教材や指導法のモデルを構築する。モデルは,それらが効果的に機能する教材についての視点や,それらを用いた学習支援の在り方についての視点,または,1単位時間の授業構成や単元レベルのカリキュラム編成の視点など,様々な視点から構造的・体系的に示す。そして,抽出校にて構築したモデルに基づく教育実践を行い,生徒や教員へのアンケート調査をもとにその実践効果を考察する。それらをまとめ,研究の集大成としたい。 なお,モデルの構築は,原因帰属の側面,教訓帰納の側面,原因帰属と教訓帰納の関連における側面といった3つの側面から,学習内容や指導法を検討することになると考えられる。3つの側面をどのように機能させ,モデルに組み込むかについては,年度当初に研究協力者との打ち合わせから,具体的な方向性を決定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初に授業実践及びアンケート調査等の協力校が十分に確保できず,それらが実施できなかった。よって,授業実践に伴う教材等の物品費及び打ち合わせや学会発表に関わる旅費の執行が滞った。年度途中から,それらを文献研究や視察に切り替え,図書購入等の物品費やシンポジウム等に参加する旅費として執行したが,本来予定していた授業実践に伴う予算を下回ったため差額が発生することとなった。 平成30年度に実施できなかった授業実践及び学会発表を平成31年度(令和元年度)に持ち越すため,生じた次年度使用額については次年度配分額と合わせ,それらに関わる物品費や旅費として使用することを計画している。
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