本研究は、子供の造形と空間の関わりに焦点をあて、ディープラーニングと学校教育の「深い学び」を対比させながら、図画工作・美術科の教科性について検討したものである。 近年、人工知能は人間が物事を深く理解する過程を模したディープラーニングを取り入れ、飛躍的に進化した。本研究はこの機械による学習法に注目しつつ、図画工作・美術科教育の視点から、子供の空間把握の問題を検討した。小・中学校と長期に渡って子供の身体的発達と空間の関わりを関連づけながら、その活動の変遷を辿った。また学校とは異なる学習環境である地域社会でのワークショップ開催を通して、子供たちの活動と周囲の空間との関わりを考察した。 その結果、子供の美的感覚が造形活動を通して場所や空間に働きかけ、その感覚(視覚のみならず触覚を通して)がさらに造形活動を通して引き出され、発達していることが明らかになった。身体的にも倫理的にも発達過程にある、小・中学校の時期において、空間に美的に関わる能力が育成されていることが実証された。 こうした学びは機械学習のディープラーニングとは全く異なり、人間の身体感覚や造形感覚を通して身につくものである。また、その場の空間(環境)の中で、材料と関わりながら、美的感性が醸成されるプロセスでもある。デジタル化が益々推進される中で、手や体全体を使用しながら育まれる感性(触覚)と、そこに感じ取られるリアリティの実感を大事にする造形活動の重要性が、改めて再認識された。 子供たちの身体的発達と造形活動は、造形空間を創造するという視点からも密接に関わっている。そしてその造形活動を通して本教科では、美意識も醸成されていることが、様々な実践を通して明らかになった。図画工作科や美術科が、造形活動を通して空間に関わり合いながら自己のリアリティを実感し、美的感覚を高めていくことができる教科として、改めてその重要性が見出された。
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