研究課題/領域番号 |
17K04738
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
降籏 孝 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (20302284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 苦手意識 / 図画工作 / 美術 / 造形美術教育 / 教育方法 |
研究実績の概要 |
本研究では、3年次計画における1年次の研究に取り組むことができた。前年度までの研究を継承し、美術や図画工作に対する苦手意識の状況と実態を再度確認することから研究をスタートした。そこで平成29年度4月当初に、小学校教員養成課程及び中学校美術教員養成課程の学生を対象に苦手意識に関する実態調査を実施した。その調査の結果から苦手意識が全くない学生は7.7%で、あまりない学生は20.9%であった。その逆に苦手意識が少しある学生は31.9%で、かなりある学生は39.5%であった。全体の71.5%の学生に大なり小なり図工や美術に対して苦手意識があった。この結果は、過去3年間の調査では約6割の学生に苦手意識があったことからさらに増加していることがわかった。この調査結果から本研究の必要性とその意義を改めて再確認することができた。 平成29年度は、それまでの研究成果を生かして、苦手意識を少しでも解消すべく講義の中に具体的な教育コンテンツを取り入れながら、教育方法の視点から苦手意識を減少させる試みを実際に行ってきた。 成果を検証するために最終講義において、苦手意識がどのように変容したか事後調査を実施した。その結果19.8%の学生は変わらないと応えた。この中には苦手意識が最初からなかった学生も含まれる。かなり苦手意識が減った学生は17.6%、少し減った学生は59.3%でった。合計で76.9%の学生の苦手意識を減少させることができた。 これまでの研究成果は、美術教育に関する全国学会である大学美術教育学会広島大会において「苦手意識を抱かせない教育コンテンツの研究-図画工作・美術に対する苦手意識解消の試みの成果-」として発表することができた。 「苦手意識を抱かせない教育コンテンツの研究・開発-図画工作・美術に対する苦手意識解消の試み-」として、山形大学教職・教育実践研究第13号にまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3年次計画の第1年次その第1段階として、今まで研究して明らかにしてきた図画工作・美術に対する苦手意識をつくらない教育コンテンツの実際の検証作業に取り組んできた。最初に平成29年度における教員養成課程の学生の抱く苦手意識の実態を調査することで、あらためて図工・美術に対する苦手意識の存在を再確認すると共に、学校教育における問題点と課題が浮き彫りになった。さらに教員養成の立場から教師教育という視点でも取り組むべき課題として明確化することができた。 次に、本研究の主題である教育方法の視点から実際の講義の中に教育コンテンツを取り入れて実際に検証してきた。そして1年後の年度末に再度実態調査を行い、その結果、当初学生の抱いていた苦手意識がどのように変化したのか明らかにした。その調査結果では、苦手意識を完全に払拭することはできはしなかったが、大幅に減少させることができた。ここに、その教育的効果を実際に確認することができた。 ここまでの研究成果については、美術教育における全国レベルの学会として大学美術教育学会があるが、その広島大会において「苦手意識を抱かせない教育コンテンツの研究-図画工作・美術に対する苦手意識解消の試みの成果-」として口頭発表することができた。また、山形大学教職・教育実践研究第13号に「苦手意識を抱かせない教育コンテンツの研究・開発-図画工作・美術に対する苦手意識解消の試み-」としてまとめると共に、査読の上掲載されることができた。 しかしながら、当初の研究計画では、全米美術教育学会に出席し、当研究テーマである美術教育に関する苦手意識及び関連研究の情報収集する予定であったが、誠に残念ながら学会開催日時と本務である所属大学の業務と重なり渡米することはできなかった。 以上のことから、総合的に判断すると「おおむね順調に進展している」といえると判断させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次の研究計画としては、第1段階の研究過程とその成果によって苦手意識をつくらない教育コンテンツとその教育的効果が明らかになってきたが、次に第2段階として教育方法の視点から、いつどのようにこの教育コンテンツを生かしていくかという点を明らかにしていきたい。 さらに、研究協力者として附属小学校と附属中学校の教諭と研究チームを結成しているが、第2年次では学校教育現場の視点により、実践的に子供たちに苦手意識を抱かせない教育の在り方や教育方法の具体例を考察していきたい。 これらの研究過程を経て第2年次の研究成果も美術教育における全国レベルの学会の1つである大学美術教育学会奈良大会において口頭発表する予定である。
所属大学の業務との関連でどうなるかわからないが、国際会議や全米美術教育学会等にも積極的に参加し、海外の教育事情や教育研究の動向について情報収集や意見交換等を行っていきたいと考える。
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