研究課題/領域番号 |
17K04738
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
降籏 孝 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (20302284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 美術 / 図画工作 / 苦手意識 / 教育方法 / 想画教育 |
研究実績の概要 |
当該年度に実施した研究は、本研究第2年次の取組として、図画工作・美術に対する苦手意識をつくらない教育方法とその開発についての実証的な研究を進めることができた。 当初の「研究目的」である教育方法としては、実際に大学での授業の中で検証し、学生達の実施前の実態調査の結果から図画工作・美術に抱いていた苦手意識を授業を通してなくしていき、1年後には大幅に減少させることができた。その原因と理由の考察により、子ども達に苦手意識をつくらせない教育的効果の高い教育方法のいくつかを実際に確認し研究開発することができた。 2年次研究として、教育方法の視点から教育史上の教育実践にも着目して研究した。それが、山形県東根長瀞尋常高等小学校での『想画教育』である。それは、従来のような単に作品作りの図画教育ではなく、その根底には子ども達に生活や身の回りに目を向けさせ、その思いや発見を大事にしたことが明らかになってきたからである。その表現の根源となる児童・生徒の思いを重視することで、うまく上手に描かなければならないという苦手意識の発生を抑制し、本来あるべき表現の在り方を教育方法的に再確認することができた。その研究成果は、美術教育に関する全国レベルの学会である大学美術教育学会の平成30年9月22日・23日に開催された第57回大学美術教育学会奈良大会において口頭発表することができた。さらに、山形大学研究紀要(教育科学)第17巻第2号に査読の上、研究主題「東根長瀞校の『想画教育』についての研究ー教育方法及び教科横断的視点からの考察ー」として掲載され、平成31年3月に発行することができた。 『想画教育』に関する研究については、山形放送の取材を受けてニュースや山形新聞等でも報道されてきた。さらに特別番組民教スペシャル「想画と綴方」で朝日系列の全国放送として平成31年2月11日に放送された。研究室風景が取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通りに、教員養成の大学生を対象に4月当初に実施した実態調査においては、予想をはるかに超える図工・美術への苦手意識の存在を確認することができた。それから前期の「図画工作の基礎」、後期の「教育実践(図画工作)の講義を通じて、教育方法を工夫しながら、大学生の苦手意識の払拭と減少を目指して試行錯誤してきた。 1年後の最終講義の際に、再度実態調査を実施し、当初の苦手意識の変容を調査した。すると、大幅に苦手意識を減少させることができた。さらに、苦手意識を減少させた理由を考察することで、具体的に教育効果の高い教育方法のいくつかを明らかにすることができてきた。 また、教育史上の教育実践の考察も併行して行ってきた。昭和初期の美術教育史上「想画」と呼ばれる教育に着目し、全国において三大想画実践校の一つである山形県長瀞尋常高等小学校の想画教育を研究することができた。この研究成果は、第57回大学美術教育学会奈良大会において口頭発表すると共に、山形大学研究紀要(教育科学)第17巻第2号に査読の上掲載されることができた。 さらに「想画教育」の取材を山形放送と山形新聞社から受けて、ニュースや紙面で報道されたり、民教スペシャルの特別番組として全国ネットにて「想画と綴方」として放送されて、社会に広く教育の成果を知らしめることができた。 以上のことから、総合的に振り返ると本研究は「おおむね順調に進展している」といえると判断させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策については、当初計画の最終年度計画としてあげていた3年間の研究成果をまとめる事と全国学会で発表することを予定している。 まず、美術教育における全国レベルの学会である大学美術教育学会岐阜大会9月開催予定において口頭発表する予定である。次に、同じく全国学会レベルの美術科教育学会千葉大会3月開催予定において口頭発表する計画である。 そして、今年度は本研究3年次計画の最終年度でもあるので、提出すべき実施報告書とは別に、3年間の研究成果を冊子にしっかりとまとめておきたい。 研究を遂行する上での課題については、今年度は責任ある大学業務が課せられて十分な研究時間が確保できないことである。大学講義も手を抜かずしっかりと行いたいと考えているので、身体を壊さないように注意して適度に休息を入れながら、全力で研究と教育に取り組んでいきたい。
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